臨也受け小説
□切ないよ・・・。
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高校を卒業してから、シズちゃんとはもうほとんど離していない。常に、鬼ごっこ状態だから、追いかけられて、逃げて。
本当に、それだけで良かったんだ。
シズちゃんの中に、俺が残っていれば。
シズちゃんが俺のことを嫌っていようと、
”一番”嫌いなやつとして記憶に残ってくれれば、それでいいんだ。
―俺は、シズちゃんが一番大好きだけどね。―
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「ったく、君はなんでいつも僕のところにくるかなぁ?普通の病院行ってよ。ついでに頭も見てもらったほうがいいよ。」
「ひどいなぁ・・・。ほら、今日なんかシズちゃんの投げた自販機がクリーンヒットしちゃってさぁ・・・。腕とかひび入ってないかな?」
ついさっき、シズちゃんに追いかけられたときに、自販機が横から飛んできた。
そこで俺が吹っ飛んだところにシズちゃんが近づいてきたから、ナイフで切りつけてやった。刺さらないけど。
「君はひび入ってようが大丈夫でしょ。どうせなら静雄に腕をもぎ取られれば良いのに。」
「ははッ、すごい痛そう。」
そんなくだらない会話をしていると・・・。ガチャッと玄関の扉が開く音がした。
「あれ、セルティ帰ってきたのかなあ?おかえりー!マイハニー!!」
嬉しそうに玄関に向かう新羅の前に現れたのは・・・シズちゃんだった。俺と新羅の動きが止まった。
「よぉ。鍵あいてたから入ったぞ。って、ノミ蟲!?なんで居やがる・・・。」
「シズちゃんこそなんでいるのかなぁ・・・?」
「いや、のどかわいたから。疲れたし。」
「ちょっと静雄!!なんだよそれ・・・。ここは俺とセルティの愛の巣であって、決して君の休息所じゃないんだよ!!」
「何いってんのかわからねぇ。」
正直、俺はシズちゃんとこうしてばったり会うのは、高校以来だから、嬉しかった。
この部屋にいる間は、一応シズちゃんの親友の家でもあり、あばれることはない。
―だから、普通に話せるんだよね―
「・・・まぁ、いいや。お茶でも持ってくるよ。臨也もいるでしょ?」
「あ、うん。もらおうかな。」
新羅がお茶を取りに行ってしまうと、この部屋では二人きりだ。
普段は俺はペラペラしゃべるなといわれるほど、よく喋る。
しかし、シズちゃんと二人きりでは、どうにも口を開けない。
「・・・。」
「・・・・・臨也、手前って・・・」
「おまたせ〜!!持ってきたよー!」
せっかくシズちゃんが話かけてくれたのに、この馬鹿は、空気を読まないこの眼鏡はッ・・・!!!