丸井生誕祭BOOK

□丸井ブン太で20題
3ページ/6ページ

2.3センチ



「お前髪の毛伸びたな」
「んーまあ」



わしゃわしゃと頭を撫でると、触んなボケと言って殴られた。
なんと可愛いげのない。
はっ倒すぞ。



「そろそろ恋が叶う気がする。そしたらショートに戻る」
「…」
「なにその顔。いつもより更に変なんだけど」
「いやお前失礼」



こいつとの友達歴はかれこれ十二年。
月日が経つのは早いもんだ。

小さい頃は、私ブン太と結婚するーなんか言ってたくせに、好きな人できたから髪の毛伸ばすなんて言い出した。
さすがに最初の方は傷付いたが今はそうでもない。
まあ好きな人が誰かすら教えてくれないのだが。



「いい加減好きな人教えろよぃ」
「ブン太が教えてくれたらね」



この条件は困る。
なんたって俺ははるかが好きなのだ。
初恋も友達歴も終わるだなんて悲しすぎるから言えない。



「…」
「私もブン太の気になるし」



大人びた笑みをこぼし、こちらを見た。
距離が近い。



「…私の好きな人、知りたい?」
「おう」



そっかと言って、はるかは笑った。
幼い笑みが可愛らしい。



「…好きだよ」



一瞬頭のなかが真っ白になった。
はるかがじっとこちらを見ている。



「私、ブン太が好き。…ブン太は?」



ブン太は?と聞かれて戸惑う。
そういうことは聞かなくて良い。
ていうかこいつ確信犯だろ。
そのにやけた顔腹立つ。



「…俺も好きだよぃ」
「ふふ、そっか」
「…なんだよ」
「じゃあこの微妙な3センチの距離、埋めるとこからはじめようか」



ちょうど顔の距離は約3センチ。
まあやりたいことはわかる。
これは俺がしろというフリなのだろうか。



「…目、閉じて」



俺が頬に触れると、はるかはゆっくり目を閉じた。
少しずつ距離が埋まってく。
妙に緊張して、たどたどしくキスをした。



「…幼馴染み卒業だね」
「そうだな」



ぎゅっと腕を絡めるはるかを、軽く抱き寄せた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ