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□2月10日
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『不動の誕生日っていつ?』



不意に、適当にそう聞いてしまった自分に嫌気がさした


彼は深い碧色の視線をこちらに向けた


それから、実に簡素な答え



「知らね」



知らない、とは、ただ恥ずかしくて言えないだけ?


自分の誕生日を知らない人なんて、ここ日本にいるのだろうか


もしかしたらいるのかもしれないが………………まぁそれは置いておこう



『知らないって、なにそれ』


「………………知らねぇ」



くだらない、彼の瞳がそう告げていた


馬鹿にしたように笑って、不動は口を開く



「親なんて、いねぇから」



前に何度か聞いたことはあった


彼の親は、幼い頃に不動を捨てて、どちらの親も自分の自由を優先した


結果、彼ができてしまった


人を寄せ付けない彼が


だから、最初は好きだと言われたときには正直冗談だと思ったのだが


助けてとでもいうかのような彼の瞳に、二つ返事でOKした



『………………それじゃあ、今日ね?』


「は、?」


『2月10日。
ふ、とお、で不動の日!』



心底呆れたような目をした彼が、こちらをまっすぐに見た



「馬鹿じゃねぇの?」


『今日はお祝いだよ。
さ、プレゼント買いにいこう!!』



彼の手を引き立ち上がると、逆にそのまま引き寄せられ抱きしめられた



「馬鹿、だ」


『………………不動、お誕生日おめでとう』


「………………」



震えた腕が弱々しかった


馬鹿だと笑った不動も馬鹿なんだと、それが伝える


私も背中に腕をまわして、彼の体温をしっかりと感じる


鍛えられた体は意外にも細く、骨ばった感触があった



「あい、してる……………」



耳元で、初めてそんなことを囁かれた


彼にそんなことを言われる日は一度だってないと思っていたのだが



『うん、あのね………………産まれてきてくれて、ありがとう』



ピクリと不動が震えた


こんなことを言われるのも初めてなのだろうか?


彼は人の温かさを知らなさすぎるから


これから先も、きっと素直にはなれないだろう


それでも今、少しずつ変わってきている



『私も、愛してます』



不意に体が離された


そこに、ただ素直に笑う不動がいて


どちらからともわからず、互いに唇を合わせた













.





















ゲロ甘ァ…………………

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