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□ラブアトミック・トランスファー
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「ねぇ、」
「…………………、」
俺の声が聞こえるなら、ちゃんとこっちを見て返事をしてよ。
向けられない瞳に少し意地になってもう一度叫ぶように言う。
「剣城、」
「………………うるさい、」
ちらりと、興味なさそうにこっちを見たあと、すぐに視線を戻された。
あぁ、まるで見えない壁に阻まれてるみたいだ。
すぐに君が顔を背けてしまうのは、俺のことを嫌いだから?
………………違うか。
剣城はいつでもそうだ。
本当の自分を誰にも見せない。
「つ、剣城」
「なんだ!!!」
う、睨まれた……………。
何か話題、話題、……………そう思ってポケットに手を突っ込むと、偶然残っていたチロルチョコに触れた。
「剣城、チロルチョコ欲しい?」
「いらん!」
あぁ、怒らせちゃった。
じゃあ他には、…………………
「剣城、この問題教えてよ」
「っ、知らん!!!」
うわぁ、すごい目で見てくる。
頼むから一人にしてくれって、目が言ってる…………………。
でも、俺はもっと剣城のこと知りたい、理解したいから………………一緒にいたら、それが少しはできるのかな?
時間がどんなにかかっても、剣城の本当の目をみたいんだ。
「剣城、」
「っ、お前!」
すとん、剣城の前の席に座る。
「何、見て………………」
「うん、やっぱり綺麗な色してる」
藍色の目を覗きこんでそう言えば、ぽかんとした顔でこっちを見てきた。
どんなにうざがられても嫌われてもいい。
それで剣城がみんなと笑えるようになれればそれでいい。
「少しでも剣城に近づけるように、俺頑張るね!」
「! 頑張らなくていいっ」
ちょっと、嬉しそう?
なんてただの願望でそう見えてるだけだと思うけど。
剣城が笑顔でいられる場所になるために、俺頑張るね。
「剣城、あのね、」
ちらり、藍色の瞳がこちらを興味なさそうに見た。
それは反らされない。
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