novel
□†knock
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†私
お気に入りのアロマキャンドルに火を灯し、その灯りだけで夜を過ごす。疲れた思考が解けていく感覚に心が軽くなる。
ごく絞った音量でクラシックを流す。その空間の中で静かに眠りに就くのが最近の私の日課だった。
「…コンコン」
その時間を遮るかのような突然の音。眠りかけていた頭が一瞬で現実に戻る。
「…コンコン」
催促するかのように鳴る白い壁から聞こえる音。キミからの合図。
「なーにー?」
少し周りを気にしながら聞き返す。
「お嬢さん、お散歩しません?」
くぐもって聞こえるその声に
「今 行く!」
とすぐに返して時計を見る。午前0時7分。サッと開けたカーテンから雲に隠れた月が見えた。右のポッケに携帯。左のポッケに鍵を入れたら後は着の身着のままで。キミの待つ階段へと急いだ。