novel

□†岐路に立つ日
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1年前の春に中途半端な転入生として康平はこの学校にやって来た

「いわゆる親の都合ってヤツなんで」

何か複雑な理由があったようだけど、康平の邪気の無い笑顔のおかげか誰も深く詮索しようとはしなかった

「大学は向こうのを受けて、来年からは1人で戻るんだ」

康平が元いた場所に戻るのは、最初から決められていたことだった。私の中の康平も“1年間だけのクラスメート”で終わるハズだったのだ。それが崩れたのはいつだったのだろう?

人懐っこい性格の康平はとにかく男女問わず人気があった。漫画の中のよくある転入生のように何でも出来るヒーローでは無かったけれど、彼独特の柔らかな雰囲気は一緒にいると心が和んだ

最初の席順で隣になり、何かと世話を焼く内に私達は自然と仲良くなっていった

「梨花はさ、女って感じしないよな。すごい話しやすい」

康平から口癖のように言われるその言葉は、最初こそ嬉しかったけれど次第に私の心を苛立たせていった
その苛立ちの原因が康平への恋心だと気づくのに時間はかからず、気づいてからの私はそれを隠すことに必死になった

「来年は向こうに戻るんだ」

康平のその言葉が、私の胸の奥底に重く沈んでいた


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