novel
□†坂道
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鞄をカゴの中に入れ、彼の乗る自転車の後ろに座る。本来荷台となるここには、私用に幼児向けキャラクターがプリントされたクッション材をつけている
「乗った?」
「乗ったよー」
その言葉を合図に自転車はゆっくりと走り出した
圭と私は小学校の同級生になる。児童会で何度か一緒になった彼とはあまり仲が良いとは言えなかった。むしろ私は典型的なお坊ちゃんタイプの彼を敬遠していたようだ
中学が離れ高校へ入学し何度か駅や近所で顔を合わせることはあっても挨拶を交わす程度。そんな関係だったハズなのに、あの日を境に事態は急変した
夏休みも目前に迫った夏のある日。偶然駅で再会したあの時から、私達は始まっていたのだ
挨拶を交わして何気ない話題で盛り上がる。別れ難くて入ったファーストフード店で話が弾んだ。時間が迫り、連絡先を交換すると時間を忘れて言葉のやり取りをした
再会して3日後、お互いが望んで2人だけで会った。何をするでもなく自転車に2人乗りをして、他愛もない話で盛り上がり笑い合った。帰り道にお互いの腕を見て
「真っ赤だね」
そう言って顔を見合わせてまた笑った