novel
□†坂道
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規則正しく回る針は16時43分を示していた
「…遅い」
乗り換えが上手くいかなかったのだろうか?委員会の始まる前のメールでは予定通りに着けると言っていたから、むしろ私の方が遅れるくらいだと思っていたのに
時計から視線を外し、再度前方を確認する。そこへ丁度右折してきた自転車の姿が見えた
「圭!」
彼が私に気付くよりも先に彼の名を呼ぶ。私の声に気付き小さく手を上げて応えた彼は、少し腰を浮かせてスピードを上げ私のやや手前で停車した
「お待たせ」
微かに息切れをしながら彼は私に笑顔を向けてそう言った
「何分遅刻?」
「〜…っごめん!いつもの電車に乗れなくて。そしたら乗り換えも上手くいかなくて」
必死に理由を説明するその慌てぶりが可愛くて、思わず私は笑っていた
「だと思った。急いで来てくれたし…今回は許してあげよう」
「ははっ、ありがとうございます」
ワザとらしく偉そうに言う私に圭も合わせ、そんな会話が可笑しくて二人同時に吹き出した