novel
□†貴女
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戻した視線の先には小さなアルファベットがギッシリと並んでいて、思わず溜め息がついて出る
僕が受験する大学はやたら英語が難しく、特に長文読解は難解すぎて途中で読むことを放棄してしまいたくなる
しかし、だからこそ英語で少しでも点を伸ばさないと僕に合格は有り得ない。他の二科目では、きっとみんな似たり寄ったりの点数になることは目に見えているからだ
「…ん、これでどう?」
やや手こずったものの、確かな自信を持って先生である彼女に採点を求める
「どれどれ?……よし、上出来。これだけ書ければ苦手の英作文もなんとかなるかな?」
そう言って、嬉しそうに白く華奢な手で僕の頭を撫でた
「ちょっ…子供じゃないから」
不意に触れた彼女のぬくもりに動揺し、顔の火照りを自覚しながらもその手を払いのけた
「ごめんごめん。分かってるよ?」
まるで鈴の音のように軽やかな声で、彼女は可笑しそうに笑った
そう、いつもこうなのだ