novel
□†貴女
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時計の音がやけに響く室内。でも、それよりも大きく響く僕の心臓の音。隣に座るこの人にもしかしたら聞かれているのではないか?そんな馬鹿なことばかり気になり、肝心の目の前に広げられている問題集は一向に進む気配は無い
パコッ
はっとして横を向くと、そこには少し怒ったような顔をした彼女…由梨さんがいた
「問題解く気、ある?」
外見から想像するより少し低い声。落ち着いたよく通るその声が、軽く僕を非難する
「さっきから同じ問題を見てるだけで。そんなに難しい?」
僕の頭を叩く為に丸められた、机に広げられている物と同じ問題集をクルクルと回して彼女は続ける
「そんなんじゃ志望大に受からないからね!さっさと解く!!」
少々毒のある叱咤をされ僕は再び問題集に向き直り、今度は真面目に問題を解きにかかった