novel
□†岐路に立つ日
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携帯電話のディスプレイを眺め、電話帳の1番最初に登録された番号をダイヤルしようとボタンに指を置く。意を決してボタンを押しても、2秒も経たない内に今度は終話ボタンを押す。何度これを繰り返したのだろう?
学校近くの小さな公園。人気の無いその公園のブランコに座り、度胸の無い私は会わなくてもリアルタイムで彼と話せる唯一の手段である電話でこの1年間の想いを告げようとしていた
上を見上げると、いつの間にか空は茜から藍へと色を変えていた。思わず吐いた溜め息に虚しさが混じる。“早くしなきゃ…”気ばかり焦って肝心の行動に移せないでいた
左腕につけた時計に目をやると18時半を回っている。春が近いとはいえ、まだ肌寒い。それでも家に帰る気にはなれなかった
“家からなんて絶対に無理…”そう思い、ようやく決意して表示されていた番号へと電話をかけた
…トゥルルルルルル
数秒の沈黙の後に呼び出し音が鳴る。もう後には引けないという思いと、今すぐに終話ボタンを押してしまいたいという思いが交差した
「もしもし?」
耳元に突然響いた声に心臓が跳ね、思わず息を止める
「…もしもし?」
不審に思ったのか小さなスピーカーから少しボリュームを上げた彼の声が聞こえた