novel

□†夕暮れ道
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早く帰ろう
温かな湯気をまとい
キミが待っている

夕暮れ道 【SIDE I】


「プシュー…」

進行方向右側のドアが開き、一斉に人が降りる。それを見ながら思わず小さく溜め息をついた
久し振りに乗る電車は何故か疲れる。いつもはマイカー通勤の俺にとって帰宅ラッシュの満員電車は不快以外の何ものでもなかった

「…いや、そんなの誰だってそうか」

つい独り言が口をついて出る。本当に疲れている証拠だ。1週間の出張。慣れない場所での作業に加え、安いビジネスホテルの硬いベッドでの休息。疲れないはずが無いのにその上仕事が長引いて7日の出張が9日に延びてしまった

やっと空いた2人掛けの席に腰を下ろし、視線をガラガラになった車内から窓の外へ向ける。空はいつの間にか赤く焼け、浮かぶ雲を茜色に染めていた
考えてみればこんなに早く帰るのは久し振りかもしれない。なんだか妙に新鮮な気持ちで見慣れた景色を見ていた

「そうだ…」

ダウンジャケットのポケットから携帯を取り出しメールを打つ。部屋で待つ恋人へ帰宅の知らせをしていなかったからだ


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