novel
□†ひこうき雲
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微かな音に目を向けると見上げた空に一筋の白いラインが引かれていた
「ひこうき雲…」
遥か頭上に引かれたそのラインに、私は彼との距離を感じていた
重い鞄をかけ直し、私はいつもの電車に乗る。最近はもう早朝に乗ることは少なくなったが、下りのこの快速電車は朝よりも昼近くの方が混んでいるようだった
1時間程で着いた大学に私は3年間通っている。そろそろ卒論や就活に向けての準備に追われてくるこの時期に、私はいささかやる気を削がれていた。何故なら…
〜♪
携帯の着信音に気付き思考を一時中断する。ディスプレイには“遥”の文字。それを確認すると、一呼吸置いてから通話ボタンを押した
「もしもし?」
「あ、瑞希?今 電話大丈夫かな?」
「うん…大丈夫」
少しだけ躊躇って、私は恋人からの電話を受けた
私の恋人である遥は2歳上の大学の先輩だった。今春就職をして、東京を離れ関西の支社で働いている。そう、いわゆる遠距離恋愛と呼ばれることを私達はしているのだ