novel

□†ありがとう
1ページ/12ページ

颯太と出逢ったのは、花が咲き誇る暖かな季節

友人を介して知り合った彼は、初めて見た瞬間から私の心にするりと音も無く入り込んだ

「はじめまして」

柔らかく微笑み、静かに話す。存在自体は目立つ感じではないのに、彼は鮮やかな色を持ち、確かに息づいていた

その後何度か顔を合わせる内に自然と挨拶を交わすようになり、次第に仲良くなった。出逢った頃と変わらない柔らかな笑顔は私の心をほぐれさせ彼といる時は穏やかな時間が流れた

今でも思い出す。あの夏の夕暮れを
沈む夕陽があまりもに綺麗で大きくて、朱に染まりやがて藍に変わる空が息をのむ程美しくて

「…綺麗」

彼と二人、瞬きをする度に色を変えるその景色に飽くこと無くただ見入っていた

その頃にはもう、彼は私の中で代えることの出来ない存在になっていたようだった


次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ