テキスト1

□ジャンクイル
1ページ/5ページ


教団本部はヨーロッパ北部に在るため、冬はとても寒い。

それなのに、ラビは日が昇らないうちから部屋に押し掛けてきて、『今から外に行こう?』と誘うのだ。

思わず昨日大雪だった、ってこと忘れたのか?と疑いたくなった。

当然俺は、断ろうと口を開く。

しかし、『イヤだ!』と言うよりも先に、いつもの笑顔で押し切られてしまった。

それはもう、強引に。





そして俺は今、教団付近の林の中にいる。

外気は凛と音がする程、冷たく澄みきっていて耳が痛い。

そんな寒さのなか、ラビは上機嫌で深い雪を掻いて進む。
俺はその後ろを黙々と歩いた。

「なぁ、何処まで行くんだ?」

だいぶ歩いたと思う。

振り返れば、木々の隙間から見える教団が小さくなっていた。

「うんとね、もう少し先」

まったく答えになってねぇ。
俺はその“少し先”が何処なのか知りたいのに。



次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ