テキスト1
□ジャンクイル
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教団本部はヨーロッパ北部に在るため、冬はとても寒い。
それなのに、ラビは日が昇らないうちから部屋に押し掛けてきて、『今から外に行こう?』と誘うのだ。
思わず昨日大雪だった、ってこと忘れたのか?と疑いたくなった。
当然俺は、断ろうと口を開く。
しかし、『イヤだ!』と言うよりも先に、いつもの笑顔で押し切られてしまった。
それはもう、強引に。
そして俺は今、教団付近の林の中にいる。
外気は凛と音がする程、冷たく澄みきっていて耳が痛い。
そんな寒さのなか、ラビは上機嫌で深い雪を掻いて進む。
俺はその後ろを黙々と歩いた。
「なぁ、何処まで行くんだ?」
だいぶ歩いたと思う。
振り返れば、木々の隙間から見える教団が小さくなっていた。
「うんとね、もう少し先」
まったく答えになってねぇ。
俺はその“少し先”が何処なのか知りたいのに。