猫太郎の作文…2

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正午から夕方までの数時間。
それが僕の仕事時間だ。

まぁ、仕事と言ってもただの実家である本屋の手伝いだけど。

この小さな街で、数少ない本屋と言えども毎日のお客さんなんて数えるくらいしか居ないのだし、別にまだ13歳の僕が店番をしてもなんら支障はないのでおこずかい稼ぎにやっている。

だけど、お客さんが居なくて忙しくないのは嬉しいけど暇すぎるのは結構ツラいと云うことを最近知った。

だから暇つぶしに店の本をたまに読んでみるけど、うちの店には如何せんマンガが殆どない。
あったって僕が聞いたこともないような昔のやつばっかりだ。

後は全部、意味のわからないものばかり。

科学物理生物地学天文学哲学社会学倫理医学…学校でもまだ習わない、ていうか今後習う予定もないようなものばかりだ。

流行りの雑誌なんて一つもない。


…うちの店が人気ないの、そのせいなんじゃないの…


そんなことを考えてしまう(あながち間違いじゃないけど)。

本当にうちの父親は変わり者だ。
いつもいつも変な本ばかり集めてくるんだから。

その父親が今ハマっているのが『錬金術』だ。
そりゃあ錬金術師は何だって直せるし作れるしすごい職種だってわかるけど、頭のいい人って変人だって言うじゃん。
興味ない。

今日も今日とて錬金術書を探して街中を歩き回って居るのだろう父親の姿を思い浮かべるとそれだけで悲しくなる。


あぁ、父親が本オタクって…イヤだなぁ…。


そんな時、不意に店の中に本日初めてのお客さんがやって来た。
そのお客さんの顔を見て僕はにっこりと微笑む。

「今日も来てくれたんだ」
「…んー、まあな」

微笑んだ僕を見て彼は照れくさそうに綺麗な金色の髪を掻いて顔を逸らした。
その動きで彼の赤いコートがふわりと揺れ、床の埃がほんの少し舞い上がる。
彼の髪と同じ金色の瞳が見えなくて、少しがっかりしてしまう。

「今日はどんな本を?」


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