猫太郎の作文…2

□恋の終わり
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恋をしていました。

それはきっと
誰にも負けないくらいに綺麗で

僕にとって、何よりもかけがえのないものでした。



「家を出る?」

僕のその言葉に、僕の兄であるその人はあからさまに不機嫌そうな表情を浮かべた。

「そう。もう部屋も見つけた。東部にある小さな街なんだけど…いい所だよ」

にっこりと微笑んでコーヒーをひと口。
夕食後の穏やかな雰囲気にはコーヒーが一番だ。
だけど目の前にある金色の瞳は納得いかないとばかりにギラギラと僕を睨みつけてくる。

「急に何でだよ!?まだ体だって!!」

またそれですか…

はぁ、と小さなため息を付くと僕は手にしていたマグカップをテーブルに置いて兄さんの神経を逆撫でしないように気を付けながら再び微笑んだ。

「急じゃないよ…もうすぐ二年だ。それに僕だってそろそろ二十歳になるし、一人暮らししたってなんの問題もない」

そうだよ、人の体を取り戻して…もう二年が経つんだ。
痩せ痩けた体も、今では普通の青年と同じまでに成長した。
多分仕事だってすぐ見つかると思う。
なんなら暫くはアルバイト暮らしだって構わないし。

「んな問題じゃねぇ!!」

ならどんな問題なんだよ

そう聞きたいのを我慢して、僕は更に微笑む。
納得出来ないなら、納得出来るまで話してあげなくてはならない。
だってこれからの僕は、この人から離れて生きていくのだから。

「それにさ、ウィンリィを待たせちゃ悪いよ」
「!!!」
「知らないとでも思ってた?」

兄と、初恋の相手でもあった幼なじみの関係はずっと前から知っていた。
僕を気にして、もう一歩が踏み出せない事も。
お互いが自覚すらなかった頃から、少しずつ心が成長して近付いて行くのをずっとずっと見守って来たんだから。


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