猫太郎の作文…2

□想いの果てに
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それでもう充分だって
幸せだって
確かに感じていたはずなのに

まだまだ欲しくなるのは何でなんだろう…?


触れてくれる手の温もり
名前を呼んでくれる声


変だ。
ボクは今、すごくすごく変だ。

だっておかしいよ。

確かに充分だったのに
側に居れたらそれだけで…

なのになんで


もっと触れて
もっと呼んで
もっと見つめて
もっともっともっともっと…


満足出来ない。
したくない。

もっと…次が欲しくなる。


ねえ、兄さん…


こんなボクを…あなたは嫌いになりますか?




「まさか」

そんなボクの問いに、目の前で笑うその人は更にその笑みを深めた。

「そんなんで嫌いになんかなるかよ」

兄ちゃんを舐めんな、そう言ってうなだれたボクの頭を撫でる。

「もっと欲しがっていいんだよ、アルフォンス」

くしゃりと表情を崩して紡がれる優しいその声に胸の奥から熱いものがこみ上げて来るのがわかった。

でもね、兄さん…
足りないんだ

ずっと一緒に居るのに
ボクの側に居てくれるのに

全然全然…足りないの

どうしたら終わるのかもわからないこの気持ちはボクから何かを奪っていく。

兄さんが少し離れただけで
兄さんが少しボク以外の誰かを見つめただけで

ボクの心は簡単に真っ暗な闇色に染まってしまう。

「案外嫉妬深いんだよな、アルは」

呆れたような声。でも優しい。

「…んなに愛されて幸せモンだね、オレは」

うんうん、と納得したように頷く兄さんの姿に胸が痛んだ。


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