猫太郎の作文…2

□ハッピーハロウィン
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クリスマスも。
復活祭も。
新しい年の始まりも。
大切な人と過ごすための大切な1日なんだ。
大好きな母さん。
怖いけど優しいばっちゃん。
うるさいけど、ずっと仲良しなウィンリィ。
とてもとても大事な人と笑顔で過ごす1日なんだ。

もちろんハロウィンだってそのひとつ。

なのにさ…アル…。
お前、なんで泣いてんだよ…―――



『ハッピーハロウィン』



10月31日。
傾いた夕日が空を赤く染めるリゼンブールには2つの泣き声が大きく響き渡っていた。

「アルフォンスがぶった―!!!」
「痛いよぉ!!」

この小さな田舎町にたった一つだけ存在する小学校に集まった子供達や保護者の中でわんわんと泣く子供が2人。
1人はつぎはぎの服を着て、頭にはフランケンシュタインのようなネジの飾りをつけて。
もう1人は真っ黒な服に悪魔のような角と尻尾をつけて。
けれど、2人は服も顔もどろどろになっていた。
そのすぐ側には、ふっくらとしたさくらんぼのような唇をきゅうっと噛み締める小さな男の子が1人。
歪んだ形をしている真っ黒なトンガリ帽子を手に、その帽子と同じ色のローブを着ているその男の子も泣いている2人のように泥だらけだった。
だけど泣いてはいない。
ただ擦り傷のだらけの小さな手を握り締めて…地面を睨み付けていた。

「謝りなさいアルフォンス」
「………」

男の子、アルフォンスの肩に手を置いて母親であるトリシャは本当に怒っているのだとすぐにわかるような冷たい声で言う。

「お友達に怪我をさせたのよ」
「……」
「いつも誰かを傷つけてはダメと言っているでしょう?」

トリシャの言葉にアルフォンスの暗い金色の瞳からは次々と涙が溢れてくる。
その口元は、何か言いたそうにもごもごと動くけれど声にはならなかった。

「謝りなさい」
「………」
「謝りなさい!! アルフォンス!」

何も言わないアルフォンスの姿にトリシャが声を荒げた瞬間、
アルフォンスはトリシャの手を振り払い、その場を走り出してしまった。


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