赤い幻影
□壱
1ページ/4ページ
私は何故、こんな所に居るのだろう
と、云うか
此処は、何処だ?
Chance OR Necessary
「あぁ、気が付いたみたいだね」
突如思考を遮り意識の中に侵入して来た声に、彼女はぼんやりと天井を見つめていた眼を見開いた
慌てて跳ね起きるが、ぐらりと視界が歪み、込み上げてきた気持ちの悪さに、再び頭を白い枕に埋める事となった
「駄目だよ、急に動いちゃ」
先程聞こえた声が、また耳に届いた
若そうな声、男の物だ
負担の掛からぬ様にゆっくりと首を動かす
逆行でよくは見えないが、椅子に座る髪の長い者のシルエットが眼に映った
揺れる白いカーテン、その向こうで青によく映える雲が流れている
風がゆらゆらと空気を揺らす度に、薬品独特の香が鼻を刺激した
「ごめんね、薬の匂い気になるかな
…あぁ、此処、僕の病院だから
君が居るのはその二階の部屋」
──病院か…道理で薬品臭い訳だ
男が言った言葉に、彼女は頭の中でそう呟いた
しかし、言葉の何処かで何か引っ掛かりが生じた
──"僕の"病院
「僕は医者なんだ」
彼女の思考を読んだかの様に男は言う
…この男、何者だ?