短編的資料集
□仮面道化
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それから僕は母方の親戚に引き取られ育てられた。
叔父さんも叔母さんも優しくせっしてくれるが、右目を隠すだけでそれすらも仮面でしかないということがわかってしまう。
本当は他人の仮面なんて見たくないのに、初対面の人にたいしては一度必ず片目を瞑るという癖がついてしまった。
だけど、この能力もすてたものではない。
その人が嘘をついてるかどうかさえわかってしまう。
嘘をついてる人の仮面からは、決まって黒い煙が吐き出される。
たまに、嘘をつきすぎてるのか全身黒い煙で覆われた人を見かける。
しかし、この能力のせいで僕…『河嶋 力也』は人を信じることが出来ない。
学校でもバイト先でも、家でさえ他人の仮面を気にしてしまうせいで人が信じられなくなった。
今まで、左目で見てきた人のなかには、仮面を被ってない人などいなかった…いや、一人だけいた。
それは自分だ。
仮面はその人の顔さえ見えていれば、どんな状態でも見えた。
しかし、鏡に映った自分の顔には仮面がついてなかった。