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□性欲に滲む恋情
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こんな事を繰り返していいのか、と、思う―…。


「っ、ぁ、あっ…ん…」

うつ伏せに組み敷いた相手は、自分の与える快楽に甘い声を出して答える。
相手が一番悦楽を感じる場所を突いてやれば、それにこたえる様にして後孔が益々自身を締め付けた。

「…痛いか?」

そんな訳はない、と知っていながら、ランフィスはいつもそう訊いてしまう。
ランフィスの言葉に、枕に額を押しつけてシーツに爪を立てながら与えられる快感に喘ぎ声を上げる朔夜はふるふると頭を振った。
正気ではない事など、知っている。
朔夜は見かけによらず体が弱い。
元から肺に障害があることも原因だろうが、不治の病と言うのは厄介だ。
ランフィスは朔夜の症状を少しでも和らげるための薬剤を調合しているが、それにはある副作用があった。
それは、その薬物が少なからず媚薬を飲んだ時に似た症状を引き起こしてしまうというもの。
仕方がないと言ったらそうでしかない。
薬の調合は朔夜の体質に合わせているのだが、こればかりはどうしようもなかった。
ずるずると体内を犯される感触が、背筋を震わせる。
前立腺を刺激されるたびに、体がびくびくと跳ねて性的な快感が朔夜の背骨を伝って脳内の思考を麻痺させた。

もっと、もっとと強請る様に腰を揺らされ、初めは副作用に苦しむ朔夜を慰めるために仕方がないと言い聞かせていた自分の感情が、嘘だという事が露わになってゆく。
あの時、自分の喉元にナイフを当てて涙を流した朔夜を見た時から、ランフィスはその銀色の瞳に心を奪われていたのだ。
あんなに明るい男が、こんなにも弱ってしまったのかと思うと、その見た目以上に細い体を抱きしめずには居られなかった。
愛している。
自分は、確実に朔夜を愛してしまっている。
そんな事は自分でもよくわかっているのに、ランフィスはその感情をただただ心の奥底に閉じ込めて、誰にもばれない様にしている事しかできない。
ランフィスは、朔夜が思いを寄せる相手を言っているから。
だが、その相手がいつ眼を覚ますかわからない深い深い眠りに付いている事も知っている。
そして、その相手を見つめて涙を流さずに泣く朔夜を知っているから。
だから、ランフィスは感情を押し殺してこの行為を続ける事しかできない。
同時に、こんな不毛の中の不毛である行為を、自分の欲望のはけ口にしている自分もどうかしている、ということもわかっている。
自分は、それを口実に朔夜を抱いている。
無意識に腰を掴む手に力を込めて、ランフィスは朔夜の体内に自らの欲望を放った。
朔夜もまた、その熱い飛沫に体を震わせて絶頂に達したが、薬の副作用はそれだけでは収まらない。
肩で呼吸をしながら、朔夜は潤んだ瞳でランフィスを振りかえった。
銀色の視線が、ランフィスを捕らえる。
馬鹿が、そんな眼で見るんじゃない。
そんな眼で見られたら、わかっていても歯止めがきかなくなる。
朔夜が正気ではない事が、ランフィスにとって唯一の救いだった。
うつ伏せに組み敷いていた体を反転させると、荒い息使いのまま、ランフィスはその首筋に舌を這わせて耳の裏を緩く吸う。
朔夜はくすぐったそうに身を捩った。
抗う事の出来ない意識が朔夜を支配している。
今は欲するがままにランフィスの愛撫を求めているが、夜が明けるころにはすっかり眠りに付くのだろう。
そして翌日には何事もなかったかのように、ここを出て行くのだ。
わかっている。何もかもわかっているのに、押さえられない衝動がランフィスの胸を締め付けた。
朔夜がここを去るころには、罪悪感に支配された自分がいるだろう。
こんな状況を、自分はいい様に扱っているに違いない。
だがランフィスを責める人物など、ランフィス自身を除いてだれ一人としていないのだ。
苦しい半面、どんな理由であれ朔夜と一つになれる事が、ランフィスにとっては至福の時間であり、同時に懺悔の前触れだった。
一度引き抜いたそれを、もう一度柔らかく溶けた後孔につきたてる。
朔夜はその衝撃に背を反らせた。

「んん、っぁ、あ、っは…」

ゆっくりと抜き挿しを繰り返せば、律動に合わせて吐息とともに喘ぎ声があがる。
唾液が滴る口元が怪しく光った。
目は虚ろに虚空を映している。
何を、誰を見ているんだ。
朦朧としているだろう朔夜にそんな質問を投げかける事自体が愚問だ。
これは愛のある行為ではない。そんなことは初めから分かっているのに、どうしてもやめられないのは必要以上に朔夜を愛している自分がいるからなのだろうか。
細い腰を引き寄せ、根元まで自身を突きたてると、引き攣った声がランフィスの鼓膜を揺らす。
もっと狂ってしまえばいい。
お前に手を差し伸べられるのは自分しかいないのだから。
ランフィスはそんな思いを込めて朔夜の首筋を吸った。
この恋情を覚られる訳にはいかない為、跡を残すことなど出来やしない。
脇の下から腰までの輪郭をなぞる様に掌を滑らせ、深々と突き挿した自身をゆっくりと引き抜き、再び体の奥までを犯す。

「う、ぁ…っ、あ…」

片手でシーツを握り締め、片手に歯を立てる朔夜の表情をじっと見つめると、緩慢な動きで何度も何度も出し入れを繰り返せば、焦れたように腰を擦りつけられてしまった。
思うがままに扱って、自分は自分の欲望を満たそうとしている。
これは朔夜の為にしている行為だと言い聞かせてはいるが、全く自分の為でしかない。
汗ばんだ肌が触れ合い、吸いつく。
まるで自分が朔夜に縋りついているようだ、と思い、ランフィスは理性をフル稼働してそれを振り払うように体を離した。
自分を囲う様にベッドに突かれた腕を、追い縋る様な手つきで朔夜が掴む。
潤んだ銀色に眼が、ランフィスのアイスブルーの瞳を捕らえた。
二の腕を伝って肩を掴まれ、濡れた唇が求める様に開くのをもう見てはいられなかった。
唾液で滑るそれに、自分の唇を合わせ、賺さず差し出された舌を吸いながら律動を加速させる。
どんなに理性を保とうとしても、最後には無駄な足掻きになってしまうのは毎度のことだった。
頭の中を回る無駄な考えは、何処かへ捨ててしまおう。
これはただ、体の疼きを止めるだけの行為だ、と自分に言い聞かせる。
朔夜とてどうしようもない状態なのだ。
ならば、やはり自分はそれを利用するしかない。
わかっている。わかっているのだ。
朔夜が自分に振り返る事は無いのだという事くらい。
もしも、万が一にでもそうなるとしたら、ランフィスは一生罪悪感に浸りながら生きて行くしかない。
結局自分は、朔夜を抱きしめる事など出来やしないのだ。
それなら、この状況を利用するほかに選択などない。
ただこの一時だけの時間を。


























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