UNDER

□hate or love
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何も言い返せなくなってしまった譜迩は大人しくアサシンの後についていくしかな
い。
無言で腕を引かれたまま、プロンテラの街中を行く。
先程よりは歩調を緩めてくれているのだろうか、小走りにはならなくてすんだ。

「入れよ」

ふと立ち止まった家の前で、アサシンがドアをさして言う。
そこはプロンテラの外れにある小さな建物だった。外観はそこらに立ち並ぶ家々とな
んら変わらない。
ここがアサシンの家なのだろうか。
だとしたら、どうして此処に用事があるのだろう。
譜迩は訝しげな眼をアサシンへと向けるが、アサシンは何もただ無言で家の中へ入れ
と顎をしゃくるだけだった。

「はぁ・・・」

意識せずに溜息が口から漏れる。
譜迩は恐る恐るドアノブに手をかけた。
蝶番の軋んだ音と共にドアが開く。部屋の中は昼間だというのにも拘らず、ひんやり
と冷えていた。

「わぁっ!!」

半歩脚を踏み入れたところで、背中を押される。思わず大きな声が出てしまった。足
元がもつれてそのまま玄関に転びそうになるが寸でのところで壁に手をつき、何とか
顔面強打は免れた。

「い、いきなりなにするんですか!!」

譜迩は振り返ってアサシンに言う。アサシンは何事も無かったかのようにドアを閉め
ているところだった。

「・・・あんた、警戒心なさすぎだよ」
「いきなり後ろから押されて、警戒心もなにもあるかよっ!!」
「そういう問題じゃないよ」
「じゃあなんなっ・・・!?」

突然の事に、一瞬何が起こったのかなど理解できなかった。
アサシンはただ表情も変えずに目の前にいる。譜迩だけがこの状況を理解していない
ようだ。

「なっ・・・なにしてんだよッ!!」

ばさり、と、きちんと着ていたはずの自分の服が床に落ちる音で我に返る。
反応が大幅に遅れてしまった。譜迩は震える声でそういうのが精一杯だった。

「大人しくついてくるから、慣れてるのかと思ったんだけど」

アサシンはにやり、と口を吊り上げて眼を細める。
譜迩は漸く今自分が置かれている立場を悟った。

「ふ、ふざけるな・・・っ」

上半身は既に何も纏っていない。ベルトに手を掛けられたところで思い出したかのよ
うに譜迩は暴れ始めた。

「ふざけてないけど? アンタこれがもくてきなんじゃないの?」

アサシンは暴れる譜迩を見てさも可笑しそうにそう尋ねてくる。
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