UNDER

□熱
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カイトとはこの教会内で唯一同系統の職業だ。
しかし、マーチャント時代はよくスキルの取りの相談からステータスの振り方について話
し、一緒に特殊スキルを取りに行ったり並んで露店を出したりもしていたが、二次職はブ
ラックスミスとアルケミストと別れてしまった為行動を共にすることも少なくなってし
まった。
カイトはバランス寄りの製造アルケミストだが、リクは完全製造BSである。
昔は成長の遅いリクにカイトが合わせて狩をしていたものの、今では狩場も違う上に露店
を出す場所も離れているという状態。その上リクは夜遊びにも余念がない。こうして食事
を取るとき位だろうか、一緒になるのは。

「最近どう?儲かってる?」

リクはそう言いつつ、我ながらなんとも商人系らしい質問だと笑いそうになった。

「お前程じゃないがな、まぁそれなりに…」

苦笑しながら答えたカイトに、リクはまたまたぁ〜と相槌を打つ。

「需要の高い回復系アイテムは単価低くても儲かるデショ。俺なんか長時間勝負だぜ?」

座ってばかりいると腰が痛くなると愚痴を吐けば、カイトも確かに、と頷いた。

「リク…」

呼ばれてカイトを見れば、先程まで浮かべていた微笑は何処かへ消え失せ、いつになく真
剣な表情でリクを見ている。
リクは話を促す様に首を傾げた。

「この後、いいか?」

食卓で出来ないような真剣な話でもあるのだろうか。
じっと、深いダークブルーの瞳がリクを見つめている。

「あぁ、別にいいよ?お前の部屋行けばいい?」

軽く返事を返したが、まさかあんなことになるなどこの時点のリクには想像もつかなかっ
た。

















ぐったりと投げ出された白い指先が力なくシーツを掻く。
リクは柔らかなベッドの上にいた。
布団から微かに薫るのは、よく知った男の匂いだ。それも兄弟のように暮らしてきた男の
もの。

「うっ…」

体が思うように動かない上に、意識も朦朧としていた。
しかし、体の芯は熱を持ったかのに熱い。
リクは虚ろな意識でこれ迄の経緯を辿った。

相談があると言ったカイトの部屋に入ってすぐ、リクはカイトによって用意された珈琲を
飲んだ。ベッドに腰掛けて、暫くは他愛もない話をしていた筈だ。それから少し経って、リクは体の異変を感じ始めた。
徐々に力が抜け、座ってさえも居られなくなってしまった。
まるで酒に酔ったかのようにそのまま腰掛けていたベッドに倒れ込んだ。
風邪でも引いたのだろうか。
最初はそんな風に思っていた。
心配したらしいカイトが水を持ってきてくれたが、それを飲む力さえ無かった。

「苦しいか?」

カイトの声が耳に触れる。
ぞくり、と腰の辺りが疼いた。
おかしい。
この気だるさは風邪の症状に似ているような気がしていたが、リクは今になってそれが全
く別物であると気付いた。
腕が鉛の様に重い。
いや、腕だけではない。体全体が重たいのだ。
それなのに―…。

「…っ」

熱は、下半身に集中している。
これはただの風邪ではない。
リクは唯一動かせる視線でカイトを見た。

「すまない。この薬が上手く出来たか試した」

そう言うカイトの手には、淡いピンク色をした液体が入った瓶が握られている。
リクはキツくカイトを睨み付けた。

「先に、言っとけよ…」

声にすら力を込めることが出来ない。

「なんの、くすりだ…っ」

効果など、試された自分の体が一番よく知っている筈だった。
だが、敢えてカイトの口からそれが聞きたかった。そうすれば自ずと、それを何故リクに
対して使ったのか、という答えが聞けると思ったからだ。
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