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□一番欲しいもの
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こういった行為には大抵「好き」だとか「愛」だとかが絡んでくると、リクは思っている。
ただ、カイトの場合はそのどれもが当てはまらないような気がしてならなかった。
20年近く一つ屋根の下で暮らしていても、カイトはいつでもストイックな男だった。
押し殺した感情が再び熱を持ちそうで、恐ろしくなる。
「薬の、実験とか…?」
呼び覚まされそうになる感情を抑えようと、真逆の発想を口にした。カイトの動きが止まる。
長い沈黙が生まれた。
時間にしてみればほんの5秒足らずだろうが、明らかに長く感じられる時間だった。
「お前が欲しい」
「…は…?」
「だめか?」
「え、と……」
もらった返答の意味が、瞬時には理解出来なかった。
頭の中が混乱して、抵抗が弱まっている。
カイトはその隙にリクの下肢から下着ごとジーンズを奪い取った。
「えっ…ちょ、まっ…ッ!!」
時既に遅し。
カイトはリクの反応しかけたソレをやんわりと掴み、擦り上げた。
「っう…」
リクの思考とは裏腹に、触れられたそこは徐々に変化してゆく。
思わず漏れた吐息を噛み殺し、リクはカイトを見上げた。
「マジで、やってんのか?」
「遊びでこんなことをするほど酔狂じゃないつもりだが…?」
問い掛けに答えたカイトは至って真面目な表情をしていた。
カイトはいつもポーカーフェイスだからそれも当てにならないといえば当てにならないのだが。
「はっ…ぁ!?それはダメだっ…ッて…ッ!!」
ゆるゆると上下していた手にぎゅっと目を瞑っていたリクだったが、不意に襲われた柔らかく暖かい感触に目を見開けば、そこには自身に舌を這わせるカイトの姿があった。
「ぃっ…やめろってッ!!」
本来そこにあるべき顔ではないカイトの顔を見るだけで、どうしようもなく狼狽してしまう。
幾度となく付き合った女達にされた行為故に慣れている筈だと、思っていた。
カイトはリクの思考などお構い無しに、ソレを口の中へと入れてしまう。
「あっ…く…」
先端を舌で抉られ、仰け反る。
痛いほどに吸われれば、イヤらしい音が部屋に響いた。
「はっ…もぅ、いい…ッ」
どうしてこんなことをするのか、などという疑問は既に頭からすっぽり抜けてしまったようだ。
ただ、今のリクは出してしまいたい衝動を抑え込むだけで精一杯だった。なんとしてもカイトの口の中にしてしまうことだけは避けたい。