SS
□バレンタイン企画!!vol.8
2ページ/3ページ
「何処で、買いました?」
質問を変えてみたが。
「答えられないな」
セリオスからは同じ答えが返ってきてしまった。
貰ってもいないし、買ってもいない。
その外の答えといったら一つしかないような気がした。
「セリオス、もしかして…」
ノアールはセリオスを凝視する。
セリオスは優雅に珈琲を啜っていたが、ノアールが言わんとしていることがわかったのか、すっと目を細めるとゆっくりとカップをソーサーに戻した。
「もしかして、なんだ?」
先を言おうとしないノアールに促すような台詞を吐くセリオスは、真正面からじっとノアールを見つめている。
「…もしかして、作ったんですか?」
その言葉を口にした瞬間、鼓動が早くなるような気がした。
セリオスは綺麗な金色の目でじっとノアールを見つめている。
沈黙は、肯定なのか。
この箱の中身はセリオスが作ったもので、しかも今日がバレンタインだと言う。
頬がだんだん熱くなってきた。
「開けてみても、いいですか…?」
最早これ以上セリオスと視線を合わせてはいられなくなったノアールは、箱に手を伸ばしてそう言う。
「どうぞ?」
セリオスは頬杖をついて箱を開けようとするノアールの様子を眺めながらそう答えた。
セリオスの視線が痛いくらいに突き刺さってくるがノアールはそれに気付かないふりをしながら箱を開く。
「わあ…これ、マカロンですか?」
箱の中は一口サイズの可愛らしいマカロンがたくさん入っていて、ノアールは思わず感嘆の声を上げてしまった。
そう言えば、先日暇つぶしにとみた雑誌に載っていたマカロンを見てセリオスに食べてみたいとか言ったような気がする。
その時のセリオスは物凄く興味無さそうにそれを見ていたがら、まさかこんな風に貰えるだなんて思ってもみなかった。
しかも、コレは買ってきた物ではなくセリオス自身が作ったものだ。
「今すぐにアイスウォールかけて保存したいくらい嬉しいんですが…どうしよう、食べるのが勿体無いです…」
ノアールはそう言うと、セリオスは呆れたような笑顔でため息をつく。
「素人が作ったものだから美味くはないかもしれないが…お前に食べてもらう為に作ったんだぞ?」
食べないというのなら、私が頂こう。
そう言いながらセリオスはマカロンを一つ摘みだして口元へ運ぼうとした。
それを驚いた表情で見つめていたノアールは、
「ダメ!!」
と声を上げて自分でも驚く位に俊敏な動きでセリオスの腕を掴むと、その指ごとマカロンにかぶりついた。
「こら…指まで食べるんじゃない…」
セリオスは表情を変えずに言って笑う。
「美味いか?」
慌てた様子で指を唇から離したノアールに向かってそう訊けば、彼はこくこくと何度も頭を縦に振って答えた。
「とっても美味しいです」
ノアールは口の中のマカロンをゆっくりと味わってから飲み干すと照れたような微笑みを浮かべてそう言う。
セリオスはそんなノアールの口元に付いていたクリームを指先で拭った。
「そうか、私にも確かめさせてくれ…」
そう言いながらセリオスは椅子から立ち上がったので、ノアールは慌てて箱の蓋を閉めてセリオスを見上げる。
「ダメです!!コレは僕がもらったんですか……っ!?」
しかし、講義の声は最後まで言わせては貰えなかった。
テーブルを挟んだまま、顎を掴まれてされるがままに、口付けられてしまったのだ。
あまりの出来事に一瞬何が起こったのか理解できなかったが、何をされているのかわかっても全く体が動かない。
そのまま硬直していると、僅かに唇の角度を変えたセリオスが舌を入れてくる。
拒むことすら出来なかった。
「……っ」
息をする事も忘れてただただセリオスの舌の動きだけを感じ取る事に神経を集中させているノアールに、セリオスは一度唇を離すとこう囁く。
「体から力を抜け。息をしろ」
そんな事を言われて出来るものではない!!
と反論したかったが、言う暇も与えられないうちにもう一度口付けられた。
「ん…ふっ…」
どうしてよいのかわからなかったが、とりあえず言われたように息をしてみる。
唇を少しだけ開けて息を継いだのだが、その瞬間に深くまでセリオスの舌が入り込んできた。
「んむっ…ん、んーッ!!」
奥まで入り込んだ舌が付け根の辺りを擽るように舐めてくる。
ノアールは思わずセリオスの肩を押した。
息をしろと言われたものの、これでは息など出来たものではない。
ガタンとテーブルが揺れて珈琲カップが倒れた。
「っ…は、少し甘過ぎたか?」
唇を離したセリオスはそう言いながらぺろりと自分の唇を舐める。
「な、なんてことするんですか…っ!!」