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□バレンタイン企画!!vol.7
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朔夜がその場からいなくなり、緋奄は刹那に無理やり片付けをさせられていた。

「あー…めんどくせぇ…」

刹那が料理器具を洗っている最中、緋奄は床に飛び散ったチョコレートや生クリームなどを拭き取る作業をしていたが、既に限界だったのか手にした雑巾を投げ捨ててそう言う。

「…手伝ってやってんだから、さっさとやれよ…」

そんな緋奄を横目に、刹那は洗い終えた調理器具を拭きながら言った。

「爆発させたのはお前だろ」
「…沙稀もやった」
「沙稀のはこんなに散らばらなかっただろ」
「…全員使ってたぜそれ」
「だから使ったものは私が洗ってるじゃねぇか」
「……」

刹那の言葉に緋奄は最早言い返す言葉がみつからない。
正当な意見に自分がさせられていることは納得出来ていたが、如何せん苛立ちは収まりはしなかった。

「…なぁ」

再び作業を開始した刹那に背後から近づいた緋奄は、そっと刹那の腰に腕を回しながら甘えたような声を出す。

「少し休憩しないか?」

ウエストからパンツの中に手を突っ込み、下着ごしにそれを撫でようとすると…

ガツン

一瞬緋奄の視界に火花が散った。

刹那が手にしたフライパンで緋奄を殴ったのだ。

「〜〜〜ッ!!テメェ、ちったぁ自分のSTR考えろッ」

緋奄はあまりの痛さに数歩下がると、側頭部を撫でながら刹那を睨む。

「手ぇ突っ込んできた奴に言われたくねぇな」

ぶすっとした表情で言われ、またもや返す台詞を失う緋奄。
今日はどれもこれもうまくいかない日だ。

「厄日か…」

ぽつり、と呟けば

「そうでもねぇと思うが…」

刹那がそう返す。
それと同時に差し出された手には丁寧にラッピングされた箱があった。
緋奄はそれが自分への贈り物だということに気付かず訝しげな顔をして刹那の顔を見返すが、刹那は生憎緋奄の方を向いていない。

「…なんだよ」

一向に箱を受け取らない緋奄に、刹那はそれを押し付けた。

「あ?」

緋奄が箱を受け取ったのを確認すると、刹那は再び作業に戻ってしまう。
緋奄は手にした箱のリボンを解いて中身を見た瞬間にぽりぽりと頭を掻いた。
箱の中には、綺麗に並べられたカラフルなチョコレート。
よく見れば少しだけ歪なのは、それが素人によって作られたものだということが伺える。
これは刹那が自分で作ったものだろうか。

「あー…言い出した奴が何も作ってねぇのは頂けないからなぁ…」

がしゃがしゃと洗い物をする刹那は背中を向けてそう言う。
緋奄はそれを聞いたか聞いていなかったのか、箱の中からチョコレートをつまみ出すと口の中へ放り込んだ。
甘さの中にほろ苦い味が混じるチョコレートは、甘いものがそこまで得意ではない緋奄の口に合う。

「…うまい」

緋奄が思わず呟くと、

「当たり前だろ」

と、刹那は得意気に返した。
しかし、緋奄の脳裏ある疑問が浮かんでくる。

「…普段料理もしねぇやつがよく作れたもんだな…」

その疑問をぽつりと呟けば、刹那が意味深な笑顔で緋奄を見た。

「あぁ、エリザを呼んで作り方教えてもらったんだよ」
「…ふーん…」

何事でもないかのようにそう言う刹那。
それを聞いた緋奄は、なぜか心の中がもやもやして気分が悪くなった。
一体なんだ、と考えるもなく理由はわかる。
だがそれを自分で認めたくないし、刹那に知られるのはもっと嫌だ。

まさか、自分が嫉妬するなど…。

「で?全部作ってもらった、ってわけか」

緋奄は箱の中身を見ながら嘲笑した。
その言葉に刹那のキレイな眉がぴくりと跳ねる。

「…だとしたら?」

刹那は緋奄に背を向けたままそう言った。
その言葉に、緋奄の中で何かがキレる。
やはり、そうなのか。
カマを掛けたつもりが的を射てしまったのか。

「アイツに全部やってもらったんだろ?そんなもんもらったって嬉しくもなんともねぇっつってんだよ!!」

いいながら、緋奄は手にした箱を床にたたきつけた。
綺麗に並べられていたチョコレートがころころと床に散らばる。
刹那は目を見開いてその光景を見たが、直ぐに表情を戻し、ふ、と儚げに笑った。

「そうか…バレちゃしょうがねぇ。そうだよ、全部作ってもらったさ」

シンクに寄りかかり、真正面から緋奄を見据えて刹那が言う。
その言葉を聞いた緋奄はカーッと頭に血が上って行くのを感じ、思わず刹那の胸倉を掴みあげた。

「ふざけんじゃねぇ」

至近距離で睨み付けても刹那の表情は薄ら笑いが張り付いたまま変わりもしない。
ぐっと胸倉を掴む腕に力がこもる。

「ちょっとでも嬉しかったか?私が作ったと思ったら…」

刹那がそう言い終わるか否か、緋奄は振り上げた腕を刹那に向かって振り下ろした。
しかし拳は刹那の綺麗な顔に後数センチというところでぴたりと止まる。
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