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□バレンタイン企画!!vol.4
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ボソボソと言いながらも、また涙がこみ上げてきそうになり譜迩は鼻を啜った。
そんな譜迩を見て、琉稀は困ったような表情をする。
「本当は女の子の方がいいんじゃないの…?」
琉稀に何もしてあげられないことが、こんなにも悔しく感じたことはない。
女のように接しろと言うなら、それ位はなんとかなっても、男の自分には出来ないことなんか山ほどあるのだ。
それを考えば考えるほど、自分が琉稀の傍にいていいのか、わからなくなった。
「お前…ホントにバカだな…」
琉稀はそんな譜迩の言葉に対して呆れ返った表情でそう言う。
「だったら初めからお前と一緒にいたりしないよ」
にこりと笑って、琉稀は譜迩の眦に溜まった涙を指先で拭った。
「…ねぇ、譜迩…聞いて」
こつんと譜迩の額に自分の額を押し当てて、琉稀が言う。
「俺はもうチョコレートとか貰いたくないんだ。お前が今日何も持ってなくてホントに良かった…」
「…な、なんで…?」
急に諭すような口調で言い出した琉稀に、戸惑う譜迩。
「…今日ね、誕生日なの」
そう言う琉稀の声はどこか照れくさそうだった。
譜迩は言われた言葉に思わず額を離して琉稀を見つめ直す。
驚いて声も出なかった。
ぱちぱちと瞬きを繰り返して、何度も言われた台詞を胸中で反芻する。
誕生日…誕生日…。
「え、えっ…えーっ!?」
譜迩はぱくぱくと口を動かすものの、なかなか次の言葉が出てこなかった。
琉稀はふぅ、と溜め息をつく。
「だから、もういらないんだよ。チョコレートは」
「っでも!!俺…っ!!何で言ってくれなかったんだよ!!」
譜迩はアーッ!!と声を上げてその場にしゃがみ込んでしまった。
「もう!!俺バカすぎるじゃんっ!!チョコレートもあげれなかったし…誕生日とかっ…なんもしてないじゃんッ!!」
「うん。言ってないし、当たり前じゃない?」
「そういう問題じゃないっ!!ああもうっ…バカッ!!琉稀のバカッ!!何で教えてくれないんだよぉッ」
何も知らないのは、仕方なかったというのに、譜迩の心は悔しさで一杯だった。
誕生日には何か欲しいものをプレゼントしようだとか、知っていたら琉稀のために何だって出来たのに。
「言ってくれたらプレゼントとか用意したのにっ…もう何も出来ないじゃん!!」
そんな気持ちをどこにぶつけたらいいのかわからずに、譜迩はただ独り言のように喚く。
そんな譜迩を見下ろして、琉稀はニヤリと意味ありげな笑みを浮かべた。
「別に、プレゼントいらないとか言ってないよ…?」
「え…?」
その言葉に譜迩がばっと顔を上げる。