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□バレンタイン企画!!vol.4
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琉稀は、心身ともにボロボロだった。
慣れない事ばかりしたせいもあるし、とんでもない事ばかり起こる日だった。

要するに、散々な日だったのだ。

緋奄と沙稀が一触即発の危機的状況に陥った時はどうなることかと思ったが、幸い刹那が様子を見に来たことでなんとか治めることができた。
やはり、刹那はすごい、と思い知らされる。
ただのナイフがあそこまで恐ろしく思えたことはなかった。
同時に、あんな人の治めるギルドに自分が所属しているのが信じられなくもなり、少しばかり困惑した。

「はぁ…」

無意識に口から出た溜め息は、白く霞んで消えていく。
疲れきった足取りでプロンテラ中央まできた時、琉稀は手にした小さな箱を確認してから譜迩にwisを送った。
譜迩は琉稀からwisを貰い、慌ただしく準備をしていた。
急いでコートを羽織り、教会を飛び出す。
外に出て余りの寒さに一瞬身が縮まった。マフラーを巻き忘れたが、そんなことに構ってる余裕はないと思い、小走りにプロンテラ中央へ向かう。
バレンタインということもあってか、楽しそうに手をつないで歩く恋人達の合間を縫って、漸くそこへ付くと、噴水の縁に腰掛けた琉稀の姿が見えた。

「よぅ…」

膝に手を当てて息を整える譜迩に向かって琉稀が言う。
そのゲッソリとした様子に、譜迩は首を傾げた。

「どうしたの…?」

訊けば、ますます琉稀の表情が暗くなったように見える。
そんな琉稀の表情から、話すのも疲れる、と言いたいのがが見るからにわかった。
何も知らない譜迩は任務か何かあったのだろうかと思うだけだった。

「…これ、やるよ」

何だかんだかける言葉を考えていた譜迩に向かって琉稀が小さな箱を差し出してくる。
譜迩はビックリしたような顔で琉稀を見た。

「え…?」

大きな目をさらに大きくして、譜迩は琉稀の顔と、その手のひらに乗せられた箱を交互に見る。

「今日、バレンタインだろ…なんつーか、うん…たまたま作ったからさ…」
「えと…え?る、琉稀が作ったの…?」

言われた言葉に更に驚いた。
作ったとは、一体どうしたことだろう。

「なんか、刹那さんがまた暇だったらしくてさ…バレンタインだから、チョコ作れとか言い出して…」

なんともいえない複雑な表情をしながら琉稀はボソボソと言う。

「でも、いろいろあって…ちゃんと作れなかったんだよね…」

少しばかり申し訳なさそうな琉稀の様子に、譜迩は居たたまれない気持ちになってしまった。
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