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□Merry Christmas! -evening-
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今日は本当に冷える。
空はどんよりとした灰色の雲で覆われていて、暖炉の火がとても恋しくなる日だった。

「出掛けんの?」

こんなに寒いっていうのに、そう声を掛けてきたリク兄はとんでもない薄着。
そんなんじゃ風邪ひいちゃうんじゃないかと心配になる。

「うん、琉稀に呼ばれてるから…」
「ふぅん…あそだ、アイツに頼まれてた装備の修理終わってるから取りにこいって言っといてくんない?」

一瞬変な顔したのって、気のせいじゃないよね…。
相変わらずリク兄って琉稀の事よく思ってないのかわかんないけど、なんか俺が琉稀の話をするとあんましいい顔しないんだ。
何でなんだろう。
もしかしてリク兄って…琉稀の事好きなのかな?
前から琉稀とはよく会ってるみたいだし…って、考え過ぎか。リク兄にはカイトがいるもんな。

「ちゃんと暖かい格好して行くんだぞ?ほら、これ貸してやるから」

そう言ってリク兄が取り出したのは手袋とマフラー。

「ありがと」

リク兄は俺に甘いのか、過保護ってくらい俺の事を気遣ってくれる。
俺は有り難くそれを受け取って教会を後にした。

「今日は雪が降りそうだな…」

ドアの前で帰ってきたばかりのセリオスにあう。

「おかえり、セリオス」
「あぁ、お前は今から出掛けるのか?」

セリオスはそう言いながら、俺が身に付けようとしていたマフラーを取るとそっと首に巻き付けてくれる。
その時に少しだけ触った指先がとても冷たかった。

「寒かった?」
「ん?そうだな…今夜は冷えるぞ?」

喋る度に白い息が舞う。

「風邪引くなよ」

お前は昔から風邪ばっかり引いていたからな、と皮肉っぽい言葉を忘れずに付け加えてセリオスが言った。

「もう子供じゃないから大丈夫だってば」
「相手の奴にも言っておけ」
「!」

くすり、と意味深な笑いを浮かべて言われると、なんだか悪いことでもしてるみたいな気持ちになる。
二の句が継げなくなってしまった俺の頭を撫でると、セリオスはそのまま教会の中へと行ってしまった。
なんだかそわそわした気持ちになりながらも、俺は待ち合わせの場所へと足を運ぶ。

プロンテラの中央広場。
噴水のあるこの場所はよく待ち合わせに使われるんだけど、やっぱり今日はいつもより人が多い。
こんな中で待ち合わせ相手を探すのはとっても大変だ。
俺は一際目立つ銀髪を探した。
待ち合わせ相手の琉稀は、すごく身長が高い。
悔しいけど、軽く考えても俺よりは頭一つ分は大きいから…。
それを知ってるのかどうなのかわからないけど、こんな人混みの中で待ち合わせする時はいつも立っていてくれるんだ。
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