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□この日だけは
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「こんな用事で来るつもりじゃなかったんだけどな〜…」

真昼間だから、イルミネーションの活躍は見れネェけど、明らかに街中はクリスマス装飾で溢れかえっていた。
これを期に一儲けしようと企んでいるのか、サンタ帽を被った商人連中が所狭しとカートを並べている。
俺は手持ちになかった回復剤の類でも仕入れようかと辺りを見渡した。

「よぉ! そこの銀髪アサシン!」

通りがかった露店の一つから声が上がる。
聞き覚えのある声だ。

「今日は一人か?」

振り返った俺にそういったのは、派手な金色の髪をしたブラックスミスの男だった。

「ん〜、まぁ今のトコロは一人だけど…何お前、今日一日俺と過ごしたいとか云わないよね? キモイんですけど」
「オ〜〜〜〜イ! んなこと誰も言ってネェよ! 勝手な勘違いしてんじゃねぇ!」

この金髪ブラックスミス、黙ってりゃそれなりに可愛い顔してんのにこの口の悪さはどうにかならないもんか。

「なんだよ。じゃあ何の用だよ」
「お前にナンパ以外で話しかけちゃ行けネェのかよ」

別にそういうわけじゃないけど…。

「今日は出血大サービス中だぜ? HSPでもどうよ?」
「なんだぁ? 出血って…あのアルケミストにヤラレまくったか…可愛そうに…」
「人の話を聞け!」
「ああそれクレよ」
「欲しいなら余計な台詞吐くんじゃネェ!」

金髪のブラックスミスはカートの中に腕を突っ込むと中から取り出したHSPを思いっきり俺のほうへと投げ飛ばしてくる。
けどなぁ、製造ブラックスミスの腕力なんてタカが知れてるぜ。

「随分と乱暴な店だなぁオィww」

俺はそれをやすやすと片手で受け止めてやった。

「フン! まぁそれ、500zでいいぜ?」
「マジで? それってお前…赤字なんじゃねぇの?」

スピードポーションですかコレ?って値段なんですけど…。大丈夫なのか、コイツ。
いっつもこんな感じだけど、一体原価幾らで仕入れてきてるんだ?今時恐喝ローグでもこんな値段じゃ仕入れらんねぇぞ?

「お前、俺の事好きなわけ?」
「ハァ!?」

だってそれしか考えらんないんだけど…。

「フザケンナ! なんで俺がお前なんか好きになんなきゃいけねぇんだよ!」

でも顔真っ赤なんですけど…。

「それ以上うちのをからかわないでやってくれ」

言い合っていると、ふいに隣に現れたアルケミストの男がそういいながらブラックスミスの隣に露店を開設し始めた。
あぁ、これも見たことある顔だ。
しかし、隣同士に露店開くなんて…。

「へぇ、相変わらず仲良いんだねぇ」

俺は準備されたばかりの露店を覗き込んだ。
そして絶句する。

「ねぇ、お前らそろいも揃って金銭感覚おかしくないか?」

手に取ったホワイトスリムポーションに張り付いていた値段は、1500z。

「今日はクリスマスだからな。早い者勝ちだ」

ニヤニヤと笑いながらブラックスミスがそう云う。

「じゃあHSP20個と〜、白スリム100個クダサイ」

こんな機会滅多にないから本当なら全部なら全部買い占めてやりたかったんだが…。
手持ちにも限界があるんだよ。
あぁ、この場合重量じゃなくてゼニーの方ね…ハァ。

「ん? おい待てよ?」

俺は金を渡そうと思って見たアルケミストの姿を凝視する。
なんだか様子が変なような気がしてたんだ。
良く見れば、アルケミストは真っ赤な洋服に身を包んでいたわけで。

「ナニソレ、ちょっとサンタさん気取り?」
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