連載

□記憶の傷跡@
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「お父さん!!」
琉稀は姿を消した父親に向かって駆け寄るが、そこには残り香すらない。
「っ・・・」
琉稀はこみ上げてくる嗚咽をかみ殺してその場にうずくまった。
「此処で待ってろなんて・・・」
セラフィスは歯がゆい気持ちで琉稀を見下ろした。
蒼く光を反射する銀色の髪。
「優祈さんは・・・?」
ぽつり、とこぼしたセラフィスの台詞に、可笑しなくらい琉稀の肩がびくりと動いた。
「・・・」
ぺたりと座り込んだ琉稀の眼から、また熱い塊が湧き上がって溢れ、それはとめどなく頬へと流れ出して真っ赤に腫れた眼をさらに痛々しくする。
「まさか・・・」
その様子に、セラフィスの顔から血の気が引いた。
「ウソだろ・・・?」
セラフィスは琉稀の両肩を掴んで泣き腫らした眼を覗き込む。
「何が居た!?」
少し強い調子で訊かれたが、琉稀は歯を食いしばって怒鳴った。
「僕はたくさんお祈りをしたよ!?どうしてお母さんを助けてくれないの!?」
「!!」
セラフィスは琉稀のその台詞を聞いたとたんに、硬直してしまった。


「神様はどうしてこんなことをするの!?」

「プリーストは神様にお願いするんでしょ!?」

「どうして助けてくれないの!?」


頭がぼぅっとする。
琉稀は顔を真っ赤にして泣き喚いた。
セラフィスは奥歯をかみ締めて地面を睨みつける。
架月があれほど怪我を負い、優祈が敵わなかった相手といえば検討はつく。
彼等は二人とも聖属性の攻撃を使うものだから。
いつの間にか琉稀はセラフィスの腕の中で眠ってしまっていた。ふとセラフィスの視界に輝く何かが映った。琉稀の首には、架月の愛用であるコボルトカードの刺さったロザリーが掛けられている。
「!」
狩りにいくときには必ずつけていっていたのに・・・どうして。
「架月さん・・・」
セラフィスは遠くの空を見上げて、祈った。















“願わくば、あの人が無事で居ますように”


















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