連載
□砂上の唄
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このプリーストは記憶を取り戻す為に諸国を巡礼しながら廻っているらしい。
だが、何故かこのモロクが気になるといって、かれこれもう1ヶ月程こうして沙稀の家に間借りをしている。
「カイン…」
沙稀は確信していた。
証拠だけではない。一目見たときから、ずっと。
たとえプリーストの服に身を包んでいても、これは、彼の愛した唯一の人であると。
唇に、触れるだけの口付けをする。
「早く、思い出してくれ…カイン…」
何とも言えない焦燥感が胸を締め付けているような気がした。
沙稀はカインの頬を撫で、その寝顔を見つめていた。
カインの目が覚めるまで。
続。