連載

□月光4
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臨時広場でそんな事を考えていた琉稀の目の前に、赤い髪の少年が飛び込んでくる。
バツの悪さに思わず険しい顔付きになってしまった。
同じ孤児院に居たことを欠片も覚えていない彼は、真新しいプリーストの制服を着ている。
琉稀は益々イライラしてしまった。
彼がその服さえ着ていなければ、こんなに悩む事など無いはずなのに。



「あんたはどうなの」
一頻り彼を拒絶する言葉を並べた後に、琉稀はそう訊く。
これで彼が自分を嫌悪してくれれば、後は諦めがつくはずだ。
幸いアサシンなど好んで関わろうとする者は少ない。
「俺は…」
彼は酷く困惑したような顔をしていた。
当たり前だろう。
きっと彼はプリーストになったことに誇りを持っている筈だ。それを知っていながら、琉稀は彼にきっぱりと言い放ったのだ。

プリーストが嫌いだ。
だからお前も嫌いだ、と。

思ってもいないことを口にするなど琉稀にとっては日常茶飯事で、何ともない事の筈だが、何故かこの時ばかりは嫌な気分になってしまった。
俯いていた彼が顔を上げる。
「俺はそれでも貴方と仲良くなりたい…」
澄んだ声が琉稀の耳に届いた。
琉稀はその言葉に酷い苛立ちを覚える。
出来ることなら今此処で自分から離れて欲しがった。
嫌われてしまえば楽になる筈だった。何故彼はそこまで自分に近付きたがるのだろう。
「アンタ、俺の事そんなに好きなの?」
まるで自嘲するかのように琉稀は言った。
彼は僅かに頬を紅潮させている。
図星か。
「…じゃあ、付き合ってよ。此処に居るって事は暇なんでしょ?」
立ち上がり、彼の腕を掴む。
「え、そうだけど…」
躊躇いを見せる彼を半ば引き摺るようにして、琉稀はプロンテラの街へと向かった。














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