連載

□月光4
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目覚めて一番最初に目に入ったのは、昨日貰ったばかりの真新しい服。
譜迩はそれを見て思わず微笑んだ。
やっと、やっと念願のプリーストになれたのだ。これで困っている人をより多く救うことが出来るようになる。
あとは早くJOBを上げて強力な支援魔法を使えるようになればいい。
アコライトのJOBを50まで頑張ったのだ。粗方のスキルは直ぐに覚えられるはず。
今日は臨時広場にでも行ってみようか。
譜迩は1日の計画をわくわくした気持ちで組み立てていた。






プロンテラ南門から出てすぐの臨時広場。
ノービスから転生職業まで職種も様々だが、レベルも様々。目的の一致する人を求めて沢山の人々が集う場所だ。
譜迩が臨時広場を利用したのはワープ場所を提供してもらうか、リクやカイトと一緒に狩相手を探す時くらいだろうか。
支援プリーストは重宝されるためどこのパーティーも欲しがるものだ。譜迩は落ち着かない様子で辺りを見渡す。
その時、譜迩の眼は広場の隅に座る人物の姿を捉えた。

銀髪のアサシン。

背格好は彼によく似ている。
半年程前に、ゲフェンダンジョンで。1ヶ月前に夜の天津で出逢ったアサシン。
彼の氷河のように冷たく鋭い視線の中に見え隠れする、何かを求めるような色が忘れられない。
恋情の様に胸を締め付ける思いがこみ上げてくる。
譜迩は吸い寄せられる様にアサシンへと近づいた。


「プリーストに用はないけど」
譜迩の姿を見つけた彼は鋭い視線を更に鋭利に尖らせて、切り捨てるようにそう言った。
「俺、まだ何も言ってないんですけど…」
「念の為」
一体何なんだろう、自分の事を覚えていてくれたのだろうか。
「あの、俺譜迩っていいます!!桜譜迩」
「ふ〜ん」
どうしていいか解らず、譜迩は名を名乗った。
アサシンは興味無さそうな生返事を返すだけ。
「貴方、の、名前は…?」
じっと見つめる彼の視線に耐えきれず、譜迩の声は徐々にフェードアウトしてしまう。
何か嫌われる要素があるのだろうか。
譜迩は目の前にいる銀髪のアサシンに憧れのような感情を抱いている。出来ることなら仲良くなりたいし、もっと彼の事が知りたい。
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