連載

□月光2
1ページ/2ページ

 小さな頃から、こうしてきた。
 だから、どんな感情も浮かんでこない。
 だから、こんな風に―…。
「誰か、居るんですか…?」


 不意に、背後から声がした。
 何をしていたんだ、自分は。近付かれることを許すなんて。
 しゃがみこんでたった今、自分が命の灯火を吹き消した相手の持ち物を調べていた処だった。
 自分の仕事は、暗殺だ。職業は、暗殺者。
 誰にも気取られる事なく、自分の仕事をまっとうするのみ。
「…誰だ?」
 面倒くさそうに、彼は立ち上がった。声のした方角へ目を向ける.
 足元の死体を隠そうともせずに。
「えっと、俺は…」
 少し緊張感のない声とともに、少年が姿をあらわした。
 真っ赤な髪をした、アコライト。
「あ! 貴方は…!」
「??」
 少年は彼の姿を見つけると、ぱっと笑顔を浮かべて近寄ってきた。
「来るな」
 彼は眉間にしわを寄せ、静かにそう言う。
「誰だか知らないが、仕事の邪魔をするな」
「仕事?」
 彼はいまいち仕事に対して緊張感を持っていない。ただ、あとあと面倒くさい事になるのを懸念してるだけだ。
 仕事の内容も、楽しいのか楽しくないのか、自分の興味がある仕事しか請け負わない。
 本来のアサシンが当たり前のようする、あたりへの警戒すら、しない事の方が多かった。
「死にたいなら首を突っ込んだらどうだ?」
「え…?」
「俺はアサシンだぞ?」
 少年は大きな目を瞬かせて、彼を見つめた。
 少年は知らないのだ。
 他のアサシンが全ての任務を闇の中で行ってきた。その所為で、アサシンの残忍さや、非情さが一般の人々に浸透していない。
 それを知っている者は、最早この世に居ないのだから。
「そんなの知ってます」
「…しらねぇだろ;」
 少年は威張るようにそういった。彼は大袈裟なため息をつき、答える。
「へぇ…。じゃあ、お前は此処で潔く死ねるんだな。その年で随分悟ってるんだなぁ…流石、坊さんだね…」
 彼は意地の悪い笑みを浮かべ、嫌味をたっぷり込めた言い回しで少年に信実を伝えた。
 少年の顔色が僅かに曇った。
「え…? 嫌だなぁ…俺まだ死ぬ気なんか…」
 少年は引きつった笑みを浮かべてそう返す。
「…鈍いな。バカなやつ」
「は…? 馬鹿ってなんだよ!? 失礼だな、貴方…これでもINTは85ある…ッッ!?」
「潜在的に、バカなんだよ」
 自分の置かれている状況を説明してやったのにも関わらず、少年は理解をしていないようだった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ