連載

□月光
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風が、アサシンの髪を揺らす。
月の光の色をした、銀色の髪。

アサシンは終始少年に背中を向けたままだったが、一瞬だけ少年の姿を確認する。
何かを言いかけるように唇が動く。
そこへ―…

「譜迩〜!!」

低いハスキーボイスが響いた。
少年はアサシンに向けていた視線を背後へ移す。

「あ…リク兄ぃ…」

未だに座り込んだままでいる少年、譜迩は自分を呼んだブラックスミスに手を振った。

「大丈夫か・・・?」


 リクと呼ばれたブラックスミスがしゃがみ込んでいる譜迩にそういうと、アサシンは我関せずといった態度でその場を去ろうとした。


「ぁ・・・あの、っありがとう!」


 譜迩は慌てて立ち上がると、アサシンに向かって叫ぶ。アサシンは何も言わずに闇の中へと消えてしまった。


「おい譜迩、なんかあったのか・・・?」

「いや、ドラに遭っちゃって・・・」

「ぶっ! けっ怪我は!?」

「大丈夫だよ、あのアサシンさんが助けてくれたから・・・」


 激しく動揺し心配する義兄を宥め、譜迩はアサシンが姿を消した方向へ視線を投げる。


「ぬぅ・・・気に食わん・・・」

「え?」


 譜迩が暫くそうしていると、リクは「不満です」と書いてありそうな表情で譜迩を見遣った。

「アサシンにろくな奴はいねーぞ」

「そうかなぁ?」

「そうだ! 金だか何だかの為に人を殺すような奴らだぞ!? 善人な訳ナイだろ!!」

「同感だな。理由はどうあれ・・・殺人はいかん」

『! カッ、カイト!!』


 熱く持論を述べるリクに反論していると、背後からリクの意見に賛同する声が聞こえた。二人は声をそろえてその人物、アルケミストの名前を叫んだ。


「何処行ってたんだよ〜」


 捜したんだぞー。とやる気なさそうにリクが言う。


「嘘をつくな。お前が私を捜すとは思えん。それは此方の台詞だ」


 ウンザリした口調でカイトが返すと、リクは可笑しそうに笑った。


「ばれた? でも遅かったじゃないか」


 何かあったのではないか、と興味本位で聞いてみると、カイトは大袈裟な溜息をつく。


「ああ、死にかけたからな・・・お前がハエの羽を持っていないというからやっただろう。あれが最後だった」


 遠い目をしながら呟くカイト。


「バッ! バカヤロ・・・じゃあ、あんだけの量どうしたんだよ!?」

「ん? まぁ、いろいろと、な・・・」


 あせったリクがそう尋ねると、カイトは意味深な笑みを浮かべて譜迩の隣へと歩み寄った。


「疲れたから、一度戻ろうか。譜迩、頼む・・・」

「オイ待てよ! まさかお前、気絶とか・・・」

「え!? カイト倒れたの!?」
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