連載

□砂上の唄4
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警笛の様に鳴る頭痛を無視して、俺はそれを飲み込んだ。
薬と共に彼が持ってきてくれた水でそれを喉の奥へと流し込む。
薬は先程の疑問など無かったかのようにすんなりと体内へ入り込んでいった。
何て事はない。
そう思ってグラスを置くと、今まで頭を締め付けるように鳴っていた頭痛も嘘のように消えてしまった。

『楽になったみたいだね。よく効く薬だろう?』

俺の表情を読み取ったのか、カグヤはそう言って俺の頭を撫でる。
何故かその仕草は酷く安心するものだった。
以前、誰かがそうしてくれた様な気がしなくもないが、きっと薬のお陰なのだろう。この安心感は。
次第に瞼が重たくなってくる。

『ゆっくり休むといいよ。今は傷を治すことだけを考えればいいから』

カグヤは小さな子供に言うように甘い口調でそう言うと、おぼつかない足取りで立ち上がった俺の肩を支えてベッドまで連れていってくれた。
横たわった俺に布団をかけ、カグヤは耳元で何か呟く。
睡魔に襲われた俺はそれがどんな言葉だったか聞き取ることが出来ないまま眠りに落ちた。


『おやすみ、カイン…』














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