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□砂上の唄4
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気付いた時は、真っ白な布団の上に寝ていた。
眼に映ったのは、不思議な天井。
起き上がる気力はなく、ただぼんやりと辺りを見渡すことしか出来なかった。

自分は、誰だろう。

此処は、何処だろう…。

全く思い出せない。

何故か胸が苦しくてたまらなかった。

誰かが頭の中で俺を呼んでいるような気がするのに、それが一体誰なのか全く思い出せない。

急に恐ろしくなって、俺はそこから起き上がろうとした。だが、体が言うことを聞かない。

全身が酷く痛んだ。
よくみれば腕や脚には大袈裟な程の包帯が巻かれている。

何故だろう。
何でだろう。

何もかも解らないという事実が今更になって押し寄せてくる。

俺は訳も分からずに叫んだ。
それは言葉にならない悲鳴だった。

痛み、悲鳴を上げる体を無理矢理動かして起きあがる。
扉が開いたのはそれと同時だった。

『っ…落ち着いて!!』

開いた扉から焦った表情の男が飛び込んできて、暴れる俺を宥めようと肩に触れてくる。

『っ…!!!!!』

それさえもその時の俺にとっては恐怖だった。
触られることが恐ろしくて、男の腕を振り払う。

『貴方は誰ですか!?俺の事を知ってるんですか!!!??』

驚いた表情の男に向かって俺は喉が裂けるのではないかというくらいの音量で問いかける。
最初こそ不信気な顔をしていた男だったが、彼は俺の様子をまじまじと見つめると意味深な笑みを浮かべた。

『貴方の名前は?』
『!?』

問われても、俺には答える術がない。

『此処が何処だかわかりますか?』
『…っ!!』

次第に、頭が痛くなってくる。
この男は一体誰だ。
俺は思わず頭を抱えてうずくまった。

解らない。

解らない。

何も解らない!!!

頭を締め付けるような頭痛は遂に吐き気を伴ってくる。

俺は混乱する頭の中をどうすることも出来ずに、ただ体の震えを抑えるように自分の両肩を抱きしめていた。

『貴方は大怪我をして倒れて居たんですよ』

男は震える俺に優しげな眼差しで、あやすようにそう言う。

『ショックで記憶が無くなってしまったのかもしれませんね…大丈夫、大丈夫ですよ…』

男の言葉には催眠効果でもあるのだろうか。
俺は彼の言葉にただ頷いているだけだった。

彼が暫くそうやって俺を宥めてくれたお陰で、俺はようやく自分の置かれている状況を理解できるくらいには落ち着いた。
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