☆イベントSS☆
□バレンタイン2013B
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「誰か、来たら…っ!」
こんな場所で既に一回吐精してしまっているというのに、これ以上の行為をすることなど断じてできない。
譜迩はなんとか琉稀の気を逸らそうと画策したが、いい考えがてんで浮かんでこない。
譜迩の困惑をものともせず、受け入れることに慣れた後孔に滑りを帯びた指先が挿入された。
「ぁっ…や、ッ…」
無意識に足を閉じようとするが、間に琉稀の体があるためにうまくいかない。
ゆるゆると根元まで射し込まれた指が、脆い部分を掠める。
「っ、う…」
伸し掛ってきた琉稀が、耳殻を食んだ。
「っ…」
びくりと譜迩の体が跳ねる。
増やされた指が体内を蹂躙し、空いた方の手が服の隙間から滑り込んできた。
「は、っ…、んぅっ…」
声が漏れそうになって咄嗟に両手で口を塞ぐ。
誰か来たらどうすればいいのか。
譜迩は気が気ではなかったが、煽られる快感に逆らえる訳もなく、ただただ声を押し殺していることしかできない。
開けられた胸元に唇を落とした琉稀が、ゆっくりと指を引き抜く。
「……っ」
譜迩は潤んだ瞳で琉稀を見上げた。
見下ろす琉稀の瞳は、色を含んだ紅。
宛がわれた熱に腰が痺れて、先程まで指をくわえ込んでいた体内が疼いた。
「譜迩…っ」
「っひ、…ぁっ…!」
押し込まれた熱に、譜迩の背がしなる。
押し広げられる感覚に伸ばされた足先が宙を掻いた。
「ぁっ…ふ、っ」
最奥まで入って来た琉稀が、小さく息を吐く。
腰を掴む手に力が入り、譜迩は無意識に琉稀の腕を掴んだ。
「はっ…ゃ、っ…ァっ…」
ゆっくりと注挿を繰り返され、譜迩の目尻に雫がこぼれ落ちる。
吐息に混じって漏れる声に、結合部から出るいやらしい水音。
いつ誰が来るともわからない場所でこんなことをしていると、嫌でも思い知らされる。
いけないことをしているのだと頭ではわかっているのに、体はどうにもいうことを聞いてくれない。
「琉稀っ…ぁ、っ」
揺さぶられる快感に、譜迩は琉稀の腕に縋り付いた。
もう、目の前にある快感を追う事だけしか考えられない。
「はっ…、譜迩っ…」
吐息に混じった琉稀の声が譜迩の名を呼ぶ。
琉稀の頬を滑り落ちた汗が、譜迩の胸元に落ちた。
「んっ…、はっ…」
身を屈めた琉稀が、首筋を強く吸う。
その瞬間、追い詰められた快感が、弾けた。
* * *
「…ごめん」
ようやく呼吸が整ってきた頃、琉稀は珍しく申し訳なさそうにそう言った。
「……」
乱れ切った服装を整えて、譜迩は琉稀と目を合わせようともしない。
もちろんこんな場所で事に及んだことに対しての怒りだったが、そもそも何故琉稀が突然現れてこんなことになったのかも説明して欲しかった。
「信じてもらえるかわかんないんだけど…、俺チョコルチになってたんだよね」
「……」
にわかには信じられない話だ。
譜迩は腑に落ちない表情で琉稀を見遣った。
「なんでチョコルチになったの…?」
憮然とした表情で譜迩が問う。
どうせ何かのいたずらだろうと思ったのだが、
「わかんないんだよね、突然チョコルチが俺の前に出てきて、『バレンタインが嫌いな奴はオシオキしてやる!』って…」
琉稀がそこまで言うと、譜迩は思わず吹き出してしまった。
「それで、チョコルチにされちゃったの?」
「…そうだよ」
琉稀はどこか釈然としない様子で答える。
「そもそもなんで俺がこんな目にあわないといけないんだよ…」
そう言って、琉稀は深い溜息をついた。
「それはわかったけど、なにもここでする事、ないじゃん…」
思い出しながら、譜迩は尻すぼみに声を小さくしながら言う。
「あぁ、それな!」
琉稀は突然ぽんっと手を打つと、
「俺も何かおかしいなって思ってたんだよ。チョコレート舐めた時にさ…なんかこう、ムラムラしt…」
「おかしいでしょ!」
あたかも新発見をしたかのような様子で喋る琉稀の科白を遮って、譜迩が声を上げた。
「チョコレート舐めたからって…」
そこまで言いかけて、譜迩ははたと気づく。
チョコルチは、チョコレートの妖精のようなもので、バレンタインは恋人同士が甘い時を過ごす…
「…まさか、それがオシオキ…なの?w」
「おかしいでしょ!」
「チー!」
ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべた琉稀と同じことを考えたとは思われたくない。
しかし図星を突かれた譜迩は、再び同じ言葉でそれを牽制する事しかできなかった。
「チー!じゃないでしょ! もう! 折角チョコレートつくろうと思ってたのに台無しだよ…」
そうして辺りを見渡した譜迩は落胆し、深い深い溜息をついてそう言う。
「……もう、いいよ」
「え?」
そんな譜迩の様子を見た琉稀が、そっと後ろから譜迩を抱きしめた。
腰に回った琉稀の腕に、譜迩は驚きと戸惑いで硬直してしまう。
背後から琉稀の咳払いが聞こえた。
「いいか、一回しか言わないからな」
「…う、うん…」
妙な空気に、心臓が早鐘を打つ。
琉稀が柄にもなく緊張しているんじゃないかという余計な詮索が、さらに譜迩の緊張を煽った。
「…ありがとう、俺の為にチョコレート作ってくれて…」
「…!」
耳元に唇を押し付けた琉稀が思ってもみなかった言葉を口にしたせいで、顔が酷く熱い。
譜迩は、声も出せずに頷くことしかできなかった。
「おい、これいつまでここにいればいいんだ…」
怒りを押し殺した声で、リクが呟く。
「…もう暫くキッチンには入れそうにないな…」
その隣でふぅ、とため息をついたのはカイト。
「見なかったふりをしてやるのが兄としての優しさだろう」
怒りを抑えきれなくなりそうなリクの頭をポンと叩きながらそういったのはセリオスだった。
2013.02.22 Happy birthday to Ruki!