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□5月のPvP
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昼下がりのプロンテラ中央通り。露店で賑わう町の中を長身のアサシンが歩いていた。
ふと、彼はあるブラックスミスの開く露店の前で足を止める。

「よー。今日はお前向けのもん売ってねーぞ」

BSはアサシンを見るとだるそうにそう言った。

「…材料持ってきたから作れ。水属性の短剣頼む。精錬も+8でいいから」

アサシンは口を開くなりそう言うとBSに向かって幾つかのアイテムを放ってよこす。

「ばっ…か、なんつーことを…てゆかコレまじで一回分じゃねぇか!!」
「一回じゃ出来ないのか?お前の腕を見込んで言ってんだけど…。無理なら他の奴に頼むからいいや」
「な…お、おい!!待て待て!!」

弱気なBSの発言にアサシンは踵を返したが、言われた言葉に若干悔しさを覚えたBSは慌ててアサシンの服を掴んだ。

「やってやるよ!!このリク様にできねぇことはない!!!」

リクと名乗ったBSはそう言って通称クホ親父ことホルグレンの元へと足を運んだ。









「クホホホホ…」
「……」
「………」

何度この腹の立つ笑い声(?)を聞いただろうか。
リクはほぼ100%の確率で属性ダマを製造したが、如何せん精錬だけが最高+7で全滅していく。
アサシンから受け取った材料は一回分だったため、カートの中身をかき集め何回も作り直した。しかしそうして作ったものも全て儚く砕け散ってしまった。

「+7もでいいけど…」
「いいや!!琉稀、お前がよくても俺はよくねぇぞ!?製造BSのプライドが許さねぇ!!」
「……」

余計な火をつけてしまったかも知れない、と、琉稀と呼ばれたアサシンは溜め息をついた。
琉稀が思うに、リクは製造BSのプライドと言ったが、彼は製造BSとしてはほぼ完璧だ。
製造失敗などあまり見たことがない。
腕のいいBSだからこそ1回分の材料しか持ってこなかったのだから。
精錬はホルグレンの気分次第だと思う。

「チクショーっ!!ちょっと倉庫!!」

カートの中に入れてある材料を全て使い果たしてしまったリクは、そう叫んで立ち上がると猛スピードでカプラサービスの元へ走って行った。
琉稀はため息をつく。
流石に1回分の材料だけしかもってこないというのは酷だったかもしれない。
だがこれ以上何かしてやるつもりは琉稀にはなかった。相場より高く払うくらいの事はしてやってもいいが…。


「ヨッシャー!!もう一回だ!!」
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