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□6月のアサシンデレラ
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昔々、モロクにあるアサシンギルドには琉稀というそれはそれはワガママなアサシンと、琉稀の実兄である沙稀、沙稀の召し使いのカイン、そしてギルドマスターの刹那とその右腕の緋奄が住んでいました。

琉稀は毎日毎日マスターの刹那から渡される仕事を放棄してばかり。

「もういい加減にしてくれッ!!」

今日もアサシンギルドには刹那の苛立ちにまみれた叫び声が響きます。

「何を考えてんだ琉稀の奴!与えられた仕事もろくにこなさないで!!」

刹那はもうカンカンです。
右腕の緋奄はそれとは対照的に、愛用の+10裏切者の手入れに集中していて刹那の怒りを更に倍増させていました。

「お前からも何とか言ったらどうだ!?毎回私ばかりこんなんじゃいつか死んじまうぞ!!」
「ん〜…仕方ねぇよやる気ねぇやつはほっときゃ死ぬだろ」

刹那の悲痛な訴えにも適当な返答しか返しません。

「お前を頼った私がバカだった!!」

刹那はギリギリと奥歯を噛み締めてそう声を絞り出すと、机に置かれたベルをコレでもかというほど打ち鳴らしました。
すると何処からともなく淡い金髪のアサシンクロスが姿を現しました。

「お呼びですか?」

アサシンクロスは片膝を床に着けた状態で刹那を見上げながらそう言います。

「お前の弟に仕事をさせたい。何とかしてくれ!!」

刹那は藁にもすがりたい心境でアサシンクロスに言いました。
アサシンクロスは無言で頷くと、現れた時と同じように姿を消していきます。その様子を見ながら、刹那は机に備え付けられた豪奢な革張りの椅子に倒れるように座りました。

「最初からそうしとけばよかったんだ」

緋奄はやれやれと言った口調でそう言うと、手入れの終わった裏切者を片付けて刹那の座る椅子に近付いていきます。

「…」

刹那は恨めしげな目付きで緋奄を見つめました。

「そういう顔、嫌いじゃないぜ?」

むしろ好きかも、と呟きながら、緋奄は刹那に覆い被さります。
それと同時に緋奄が窓辺のカーテンを引いたせいで、二人の様子は見えなくなりました。















ギルド内、最下層のロビーに銀髪のアサシンが這いつくばって何かをしています。
左手にはボロボロに草臥れた雑巾。アサシンの横にはバケツが置いてありました。

「なんだって俺がこんなことしなけりゃなんねーんだよっ!!」

アサシンの名前は琉稀。
琉稀は全く不真面目なアサシンです。
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