+Shot one take!+
□Can't swim
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ある晴れた日の出来事であった。
アルデバランの町は非常に移動が困難な地形であることは有名だが、1つの橋の上に人だかりができていた。
「何かあったのかな?」
身長の低い譜迩では、この人混みの中で何が起こっているのかわからない。
譜迩は様々な冒険者でごった返す中、隣を行く長身の琉稀に話しかける。
「なんか、橋の下見てるけど…」
問われた琉稀が少しばかり背伸びをしてそう答えると、
「誰か助けてください! うちのアルフォスちゃんがぁあああああ!!」
欄干に乗り出した中年女性が叫び声をあげた。
やめろ、危ない! と、通りがかりの冒険者が飛び込もうとする女性を押さえつけながら怒鳴る。
「まさか誰か落ちておぼれてるんじゃ…!!」
譜迩が慌てて琉稀を見返したその瞬間だった。
隣に居たはずの琉稀が、人垣をかき分けて欄干に手を掛ける。
「ちょ、ちょっと琉稀ッ!?」
余りの俊敏な動きに譜迩は慌てて琉稀を追ったが、すでに琉稀は既に橋から飛び下りていた。
水しぶきが譜迩の顔にまで飛んでくる。
「!!」
一瞬目を閉じた後、譜迩は顔の水を振り払って水面を見下ろした。
「ぶぁはっ!! わ、わすれt…俺、泳げなかったァアアアアッ!!」
そこには、バシャバシャと水を掻く琉稀の姿がある。
「ええっ!? ちょ、ちょっと馬鹿なの!?」
そんな琉稀を見て、譜迩は思わず辛辣な言葉を浴びせてしまった。いや、それ以外なんといえばいいのかわからなかった。
その横を、ゆっくりとした動きで何かが通過してゆくのが見える。
「あああっ!アルフォスちゃん!!」
アルフォスと呼ばれた生き物は、前足を小刻みに動かしながら犬かきをしていた。
「っちょぁっ…い、犬ぅうううう!?」
琉稀は溺れながらもそう突っ込まざるをえなかった。
「もう! ちょっとは考えて飛び込んでよ! しかもここ足付くじゃん! 馬鹿じゃないの!?」
「…あ、スイマセン…」
琉稀はついで飛び込んできた譜迩に言われて初めて足がつくことを知ったのだった。
Anyone has weak point...
2012/4/2