ボカロ小説
□君はどっち?
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こんにちは、鏡音リンです。
突然ですが私は、鏡音レンっていう男の子に恋をしています。
『like』ではなく『love』なのです!!
普段は面倒くさがり屋で、素っ気ないし、抱きつくの止めろとか言ってくるし、二言目には練習しろってうるさい(それが本分だけど…)
けど、やさしくて、頼りになって、好きなことには一生懸命で、ちゃんと私のことを見てくれて、困ったときには助けてくれて、不安なときは傍にいてくれて、悲しいときには一緒に悲しんでくれる。
そんなレンがリンは大好きで、ずっと一緒にいって思う。
でも、レンはリンのこと『like』としてみていると思うんだ。
でもでも、レンが好きって感情がもう抑えきれなくて。
一緒に居ると、どんどん好きにさせられて目が離せなくなる。
だから、玉砕覚悟で聞きたいと思います。
君は『like』と『love』どっち?…と。
お仕事がなく天気の良い日のこと。
レンと部屋でゴロゴロしている最中、ふと気付いたかのような口調で何気なく本題に近づこうと計画し、これから実行します。
「ねぇ、レン?『like』と『love』の違いって何?」
「急にどうしたの、リン?」
うんうん、いきなりこんなこと聞いてきたら、はぁ?ってなるよね。
「いや、『like』と『love』って同じ好きって意味だから、どう違うのかな〜って。」
「ああ、それでね…。」
「うん…で、実際どう違うの?」
レンは私の手のひらで踊っていることに気が付いていない様子…、これなら聞き出せるかも。
「う〜ん……『like』は友達とかに使う好き…敬愛って言うのかな?たぶんそんな感じ。」
「ふむふむ」
「んで、『love』は友達以上の関係になりたい人に使う好き…つまり、恋人になりたい人に使う言葉かな…。」
ここまでは順調……、次からは慎重に行かないとだね…。
「なるほど〜……じゃあ、家族に使う好きはどっちになるのかな?」
「ん〜、家族に使う好き、か……親愛とも言うから家族は『love』になるんじゃないかな?」
ズキズキと胸が痛む…、レンはリンのこと家族として好きなのかな……?
はぁ、自分から聞き出しておいて勝手に傷つくなんて、自分勝手もいい所にしろって言われてもコレは文句言えないなぁ…。
おっと、顔に出ちゃったかな…?うん大丈夫、レンは気づいてないみたい。
ちらりと、レンの表情を伺ったが不自然な点は見当たらない、それからいつもの口調で返事をすれば、レンもいつもの口調で返してくれる。
「そっか〜」
「そうだよ…それに、『like』じゃ意味が軽い感じがするだろ?『I like RIN』より『I love RIN』の方が、家族に言われると嬉しいし、愛情たっぷりみたいだろ。」
さすがレン、分かってるなぁ〜…でもね、それは家族として言われるんじゃなくて、恋人としてレンに言われたの…。
だから、これからリンの質問に嘘つかないで答えてね…?
「確かにそうだね……ねぇ、レン」
「なに?リン」
緊張する…いや、不安と期待で胸が締め付けられてる…のかな?声が震えないといいな。
「レンにとってメイ姉は『like』と『love』のどっちに当てはまる?」
「もちろん『love』だよ。」
ドクン…!!即答されて心臓が勢いよくはねる……と、同時に締め付けられて苦しい。
けど、先ほどのレンの言葉を思い出して、慎重に言葉を選びながら再び問う。
「っ……そ、それは愛情?それとも恋愛感情?」
「愛情に決まってるだろ?」
その言葉に安堵し、勢いに任せて次々と質問をしていく。
「じゃ…じゃあ、ミク姉は?」
「それも『love』の愛情!」
「クオちゃんは?」
「『love』で親愛になるのかな?」
「えっと……カイ兄!」
「う〜ん…カイ兄はバカだからなぁ〜」
「それは関係ないんじゃないかな?」クスクス
レンの言葉に心が温かくなる…、もしかしてリンが安心するように言ったのかな?
そうだと、いいな。
「だな……カイ兄も『love』で愛情かな」
「なら、ルカちゃ「ルカもGUMIもがくぽもネルもリントにレンカも、みんな『love』で愛情だよ」
「…じゃあ、じゃあリンはどうなの!!?」
言いたいことを全部レンに言われた……けど、そこにリンの名前は入っていなかった…ああ、レンにとってリンは『like』なんだ、とすぐに感じた。
だから、半ばやけくそになってレンに八つ当たり気味に聞いた。
「……」
「……」
重苦しい沈黙…、レンは優しいからきっと言いづらいんだろうな……でも、ちゃんと受け入れるから…、今すぐは難しいかもしれないけど、ちゃんと諦めるから…だから、リンに未練を残させないでね…?
そう思って体ごとレンに顔を向ける…、距離は手を伸ばせば肩に触れるほど。
顔を上げれば、レンは微笑んでいた……たまに見せる微笑じゃなくて、今までに見たことのないような優しい微笑みを浮かべていた。
不覚にも、心を奪われた。
……まったく、これから諦めようって思ってるのに、何でそんな顔するのかな?諦められなくなっちゃうじゃん!それに、期待しちゃうよ…。
レンはリンの心を見透かしたように、微笑みながら伝える。
「…リンは『love』で将来恋人になってもらいたい……かな」
「!!……ふぇ…ぐすっ…」
諦めていたレンからの大切な言葉……、諦めていたからこそ嬉しくて、涙が頬を伝う。
どうしよう…!!嬉しすぎて涙が止まらないよ!!
「…リンは?」
「?…ぐすっ……」
「リンは、俺の事『like』と『love』のどっち?」
リンの顔見て分かってる癖に、そんなこと聞くなんて……って、もしかしてレンも不安だったのかな?
そうだったら、いいな。
「……そん、なの…ぐすっ…『love』で……今すぐに恋人になって、ほし…い、よ」
「ねぇ、リン」
「……な、に?レン」
真剣なレンの表情に胸がドキドキと波打つ……それから、レンの言葉を黙って待つ。
そして━━
「好きだよ……今もこれからもずっと…!!」
抱きしめられた……強く、優しく…。レンの腕から伝わる温もりは、リンから抱きついたときには感じなかったもの……ああ、これが幸せなんだってかみ締めた。
それから、レンにも温もりを伝えられたらいいなと思って、抱きしめ返した……強く、優しく…。
少しでも長く、少しでも多く伝えられるように…。
それで安心したのか、レンは体を離して至近距離でリンの顔を見つめる。それから言葉を繋げるように口を開いた。
「だから、俺の傍にずっといてください」
「……うん!」
それから数秒後、教会の祭壇の上で永遠の愛を誓うように、口付けを交わした。