けいおん!小説

□無題
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30度を超える猛暑が、連日ウソのように続く今日この頃、
私達けいおん部のメンバーは、長期休暇で有意義な練習に励むことが出来るというのに、
相変わらずだらだらと部室でお茶をしながら話に華を咲かせていた。


「━━それでさぁ、私が後ろから脅かしてやったら、澪の奴気絶したんだぜ?」
「なっ…あ、あれはただちょっと放心状態になっただけで、き、気絶は大げさだ!」


澪先輩は恥ずかしさを誤魔化そうと、わざと気丈に振舞う。
けど、澪先輩の言葉は大して変わらないような気がして、


「いや澪先輩、それも似たようなものですよ…」


ついついそんな言葉を漏らした。
すると、隣にいる澪先輩は、更に顔を赤くして俯いてしまったので、
すこしだけ申し訳ない気持ちになり、
心の中で「すいません…」と呟いた。


それからすぐに、大好きなお菓子を頬張っていた唯先輩は、
私の言葉に便乗するかのように続けた。


「澪ちゃんは怖がりだもんね〜」
「こ、子供じゃないんだから平気に、き、きき決まってるだろ!」


動揺丸出しの言葉に、澪先輩のポジションは変わらないな、
そう思いつつ、ムギ先輩の淹れてくれた紅茶を一口飲んだ。
うん、やっぱりおいしい。


「あ、そういえば━━」


私が紅茶を飲んでいる最中、
律先輩は何か面白いことを考えたのか
悪戯な笑みを作りながら澪先輩に後の言葉を続ける。


「━━今日澪の大好きな映画のDVD借りt……」
「うあぁぁぁぁぁぁあああああああああああああ!!!!!!」


律先輩が言い終わる前に澪先輩は大声を出しながら席を立ち、
部室の隅っこで小さく丸まりながら両手で耳を塞ぎ、
ミエナイキコエナイミエナイキコエナイ、と呪文のように何度も繰り返した。


「…………まだ誰も怖いやつなんて言ってないだろ…」


律先輩はそんな澪先輩を見て、呆れたような声でぽつりと呟いた。
私はその言葉に引っかかるものを覚えて、律先輩に尋ねてみる。


「でも、言うつもりでしたよね?」
「まぁな」


悪びれた様子もなく笑いながら答えた律先輩に、
やっぱり相変わらずだな、と素直に思いながら、残り少ない紅茶を飲み干した。

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