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□死んだ先も愛してる、のよ?
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!オリキャラ注意!
ぱんっ、
微かな破裂音が轟いた。
同時に、鮮やかな赤が狭い路地を美しく染めた。
非道、外道、そう呼ばれるものは全てやった16の頃。
私には、やってないものがあった。
「、報酬だ」
袋の中に入った膨大な数のコイン同士が擦りあい、ぢゃら、と音を立て机に乗る。
「どーも。これからもご贔屓にしてくださぁい」
語尾に星が付きそうな調子で言うと、依頼人の男は顔をしかめ、上質なワインを、綺麗に洗われたコップにいれ、私に差し出す。
「生憎私の部下がヘマをしてこんなコップしかありませんでしてね。喉が乾いたろうし、どうぞ」
「はあ、どうも」
私はそれに目を向けつつ、かと言って飲もうとは一ミリも思わなかった。
上質なワイン。
飲みたいなあもったいない。
まあ未成年だけどね。
「気持だけでも受け取っておきますわ。私これから別の仕事に行ってきますの」
これは後で。
と、付け加え、ワインの入ったコップと金の入った袋片手に早々に切り上げる。
扉を閉める寸前、男はにやりと下品に笑い、私を罵るかのように馬鹿が、と口を動かした。
内心で私は笑いころげた。
「Hey!そこの可愛子ちゃん、これあーげる」
「、えっキャッ!?」
「じゃあね」
廊下を歩いていたメイドに先ほどのワインを手渡し、香水臭い廊下の窓を開け、飛び出る。
二階だけど、足を骨折するような高さではない、
私には。
そして見事に着地した瞬間、さっきまでいた廊下の窓から、短い断末魔と何か重たいものが倒れる音がした。
やっぱり毒が仕込んであったか、と無慈悲に思う。
「あーあ、ここも贔屓にさせてもらったけど、そろそろ潮時かしら。うん、そうね、きっと。というわけで、」
自分の言葉に、自分で相槌をうち、ばん、と手を銃の形にして言い放つ。
瞬間、暗闇が真っ赤に染まった。
某所。
若い男たちがせわしなく動き回る。
そんな中、ひときわ目を引くのが、髪がピンクで統一された青年だ。
「キルネンコさん、昨夜の件、あれはやっぱりライラの犯行だと思われます」
「ライラ?」
「はい、イギリスから来た腕利きの奴で。最近裏で暗殺を担い、報酬を受けているとか、」
キルネンコと呼ばれた男より一回り大きく、強そうに見える男は、自分より一回り小さいキルネンコに敬語を使い述べた。
それを気にすることなく、キルネンコは顔をしかめ、考えるような姿勢に入った。
「ライラ、ってどう考えても英国の女の名前だね。どうしようか」
己のマフィアに仇をなすかもしれない。
が、巨大な家一個丸々爆発させるような技術は欲しい。
男は小さく、その女の居所は分かっています、と呟く。
さて、この件どうしようか。
答えを出す寸前、一つの存在に気付く。
「あれ、兄貴は?」
「えっキレネンコさんならさっき散歩へ」
あの、マイペースちゃんっ...!!
己の分身を微妙に呪った。
「あれかしら」
一人、誰もいない廃屋の屋根の上で銃を構え、呟く。
赤い髪、赤みがかった目。
間違いない、今回の標的。
新たに入った仕事の暗殺の標的にされた哀れな青年。
情報によると、マフィアのボスだとか。そんな風には見えない華奢な体だけど。
「んー、いい男!依頼じゃなかったら殺さないんだけどね」
愛銃を持ち直し、標的に銃口を定める。どんな男も、私の愛を受けてすぐに死んでいく。
父も、私に手を出してきた男共も、ペットの犬だって。
「気に入ったから、今回は直接出向いてみようかな、」
綺麗に散ってね、キレネンコ。
母国の人柱の歌を歌いながら無慈悲に言った。
「Hey、初めまして」
「......」
気配を消してから、男の後ろに立ち、話しかける。
こいつ、私が話しかける前から存在に気付いてた。
標的の男、キレネンコは近くでみると身長もさして変わらず、年齢も同世代のようだ。
改めてみる整った顔に、赤い地が散るのを想像し、心は歓喜に揺れた。
「、いきなりごめんねboy、ちよっと死んでっ...!」
銃を素早くキレネンコの眉間へ定め、引き金を引く。
が、それよりも早く、キレネンコは体を屈め、体には似つかない力で鳩尾を殴る。
そして袖から隠していた小さなナイフを取りだし、壁にもたれた私の顔の横を滑った。
頬から血がつたう。私の、血。
「っげほ、かはっ、」
鳩尾を殴られた衝撃で、むせてしまったようだ。
キレネンコはそんな様子に無表情のままそのままの状態でいる。
けれど興味が失せたのか、ナイフはそのままに、その場を去ろうと私に背を向けた。
咳も落ち着いた私の中にあったのは怒りや恐怖でもない、何か。
私に、傷をつけた。
しかも、顔に。
私を傷付けた男は、いつぶりかしら。
マフィアのボスっていうから、気を抜いてた訳じゃないのに。
むしろ、気合いなんて十分だったのに。
今の私じゃ勝てない?
今の、私では
、殺したい。
キレネンコはとうに姿が見えない。
どうやら道を曲がったようだ。
この、私の知らない感情。
「ま、待って!」
この殺意のような感情が恋愛沙汰のものだと気付くには、もう少し先のはなし。
「キレ様、お菓子を作りましたの!」
「......」
「冷たいところも素敵です!」
「ライラ、君さあ」
「あ、キルさんこんにちは」
「...うん、なんかもうどうでもいい」
長い髪は切って、キレネンコと同じ長さに揃えた。
彼の好きな食べ物も、靴も、喧嘩のしかたも、全て私は把握してる。
私の手でいつかあなたを殺して、赤に、真っ赤に染めたいなあ。
だって殺したいほど愛してる、もの。
だから貴方を殺して私が生きてるときも、私は貴方が大好きだから。
我ながら、歪んでるけれど。
少し声に出ていたようで、近くにいて聞いていたキルネンコに冷たく笑われた。
死んだ先も愛してる、のよ?
詰め込みすぎました(笑)
オリキャラ濃すぎましたね