黒バス/続編/今吉

□第4話
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名字名前、ただいまとてつもなく大ピンチです。
翔一さんとお喋りをしながら帰宅すると、帰ってこないはずの母親が帰還しました。
先輩は普通に頭下げて、私は何となく地面に視線を落としていて。

もうすぐ車から私と似たような性格の母上が下車していらっしゃるだろう。
…地獄だ。



「…出てくるな」
「いや、出てくるやろ普通に」
「扉よ開くな」
「あ、開いた。…こんにちは」
「こんにちは。…おかえり」
「…ただいま。…何で帰ってこれたの?」
「さつきちゃんのお母さんがねー、急に用事ができちゃったみたいで」
「大輝ママは」
「大輝くんから腹減ったって連絡来たって言うから『帰った方がいいわよ!』って私が言って解散になったのよ」




あの顔黒め、カップ麺でも何でも食べていればいいものを。
わざわざお母さんに連絡してまでしてご飯食べたいのか、許さないからな絶対に。

そんなことを考えながらお母さんが笑っているのを見ていると、横から視線を感じた。
…明らかに翔一さんだ。
多分、自分の立ち位置に困ってらっしゃる。



「せ、先輩、帰ります?」
「何でやねん。この状況であいさつもせんとワシ帰ったらおかしいやろ」
「…お母さん出掛ける?」
「今帰ってきたんだけど」
「………。…彼氏です」
「でしょうね」
「あ、はい」
「…え、それだけ?」
「え?あ、…はい」



ブゥゥゥゥゥン…という通りすぎていく一台のバイクの音だけが響き、私はダラダラと冷や汗をかいていた。
母から頂いた一言は「でしょうね」だった。

…え、怒ってる?怒ってらっしゃる?
そんなことを思いながら先輩の方を見ると、先輩は私を見ていた。
もう一度母を見ると、母も私を見ていた。




「はいじゃないでしょ!困ってるじゃない!!…ごめんなさいね、こんな娘で」
「いえいえそんな。…ワシがキョドりたいわ。頼むでほんま」
「え、あの…」
「あんたねぇ…自分の彼氏ならちゃんと紹介しなさい。はい、やり直し」
「え、ちょっ…」
「じゃあ車から出てくるところから…」
「ストーップ!!いらない、それいらない!!元キャプテンで大学一年の今吉翔一さんです!!はい!!」
「やけくそか。…今吉です」
「名前の母です。よく名前から話は聞いてました」
「はじめまして」



そう言ってお母さんはニコニコしながら翔一さんに話しかけた。
先輩も笑顔で返し、暫く二人で話をしてからお母さんが「家上がってもらったら?」と行ってくれた。
「…うん」と小さく頷くと先輩は「お邪魔します」と頭を下げた。

…とてつもなく疲れた。
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