黒バス/長編/今吉 T

□第6話
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涙を飲み込み、何から話せばいいのかわからない私は暫く口を開くことができなかった。
でも先輩が待ってくれたお陰でだいぶ落ち着いて、やっと口を開くことができた。



「中学入ってすぐに毎日私に会いに来た先輩がいたんです」
「…男?」
「いえ。部活の勧誘に1つ年上の女子の先輩が教室に来たんです」



そこから話し初めた私はあまり深く話しても仕方がないからかいつまんで話すことにした。

頭の中でいくつかピックアップしていくにつれ、思い出して涙が出そうになる。



「私バスケがしたかったんですが…あまりにも毎日くるのでハンドボール部に入ったんです」
「またえらい珍しいスポーツにしたなぁ…」
「私も初めてで…。最初は先輩も優しかったんです」



…最初は。
次第に冷たくなって。
あの目を
あの声色を
あの視線を
思い出したらもう涙をこらえるなんて出来なかった。



「私頑張ったんです。頑張ってやってたら先生が私をコートにいれたんです。異例の早さだったみたいで…」
「…うん」
「最初は先輩も喜んでくれました。でもやっぱり上手に出来ないから…」
「冷たなったんか」
「っ…」



真っ直ぐ前を見たままポツリと言った先輩。
その言葉があまりにも淡々と紡がれていて。

だけど次の言葉を待ってくれているのか「大丈夫か?」なんて聞いてきた。



「挨拶しても返してもらえないし…何で言われたように出来ないの?って何回も言われて…」
「まぁハンドボール何てよーやらんしなぁ」
「肩痛めて怪我して部活出来なくなって…でも先輩には嘘だって言われて…」
「………」
「同級生の中でいじめ…が、流行ってて、それが私に回って…きて…も…部活…嫌…で…」



ついにぼろぼろと泣き出してしまった。
もう口から言葉を出せない。
後から後から嗚咽が止まらなくてもう何も考えられなかった。

先輩はただ黙って見詰め、背中を擦ったりぽんぽんと叩いてくれた。



「ごめ…なさい…」
「何が?」
「迷惑かけて…ごめんなさい…」
「かけてへんよ」
「…ごめんなさい…」
「何がや」
「ごめ…なさ…」



もう口からは謝罪しか出てこなくなった。
癖なのかは私にも未だにわからない。

昔から何かある度に反射的に謝ってしまう私は結果周りを甘やかして自分が傷付くことになった。



「ごめ―――――」
「ちょぉ黙り」
「!?」
「黙り。謝るのやめ」
「………」
「今から良し言うまで喋ったアカン。わかった?」



コクンコクンと頷けば先輩はまた前を向いていつもとは違って、あの薄ら笑いを止めていた。

それからまた私を見た。
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