黒バス/長編/今吉 T

□第4話
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あの日ワシは聞いたらアカン事を聞いた気がする。
それは数日たった今でも思てる事でもあり、気になることでもある。

せやからて無理に聞くつもりも無い。
余計に名字を困らせるだけや。

せやけど時たま見せる辛そうな表情に胸が痛むし、何か力になれたら…とも思う。
ワシじゃアカン事もあるやろけど。



「名字」
「はい」
「…元気?」
「?…はい。何ですか?」
「元気ならええんよ」



そう言ってまた練習に戻るワシは何て卑怯なんやろか。
何もできへん自分が小さく見えた。

ワシらや2年と話すときと、桃井と青峰と話すときはやっぱり何か違う。
それはワシが変な質問する前からや。
ワシと目を合わせんのもそう。

マネージャーとして入部してからずっとやから、多分人見知りとかとかやろ思てたけど、どうも違う。

桃井と青峰は幼馴染みや聞いたから元から仲良しなんは知ってる。
けど、桜井はもう慣れたらしく仲良しこよし。
ワシら先輩にはよそよそしい。



「今吉さん」
「?…桃井か」
「どうかしました?」
「?なして」
「今日調子悪いなーっと思ってたらさっきため息ついてますし」
「ついてたか…はぁ」



練習中やけどどうも身が入らん。
それもこれもあの子のせいや。

気になってしゃあない。
もう無理やな、知らんふりするんも。



「桃井、聞きたいことあるんやけど、ええか?」
「?はい」
「名字って先輩嫌いなん?」
「?…いいえ?…あ」



何か思いあたる節があるようで。
目をそらしてこっちを見ようとせん。



「?…なんかあるんやな」
「………」
「ワシらやのうてワシが嫌われてるん?」
「違いますって!!」
「じゃあなんやの」



ジーッと目をそらさんと桃井の目をとらえる。
桃井も負けじとワシを見る。

ついに桃井が折れた。



「…先輩方が苦手なんじゃなくて“先輩”が苦手なんですよ、名字は」
「…は?なんやそれ」
「先生とかはいいんですけど、年が上の人が苦手なんです」
「なして」
「こ、これ以上は無理です!!」
「あ、こら!!」



走って名字の所へと逃げてしもた。
何なん、気になるやん。
ワシらがアカンのやのーて“先輩”がアカン?

今さっきも若松と笑って喋ってたやん。
何がキミを縛ってるん?
いてもたってもいられんくなった時、丁度休憩に入った。
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