頂き物・捧げ物

□東京、某日、マジバにて
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ある日のこと。
本日部活が休みだった黒子はいつものようにマジバでシェイクを飲んでいた。

街を行き交う人々を観察したり、読書をしたり。
そんなことをしていると「あっれー?」と元気な声がした。



「げっ、席ねぇし」
「?…あ、高尾くん」
「?…おー!黒子じゃん!!え、1人?」
「はい。よかったら座りますか?」
「マジかよ超助かる!サンキュー!!」



高尾は持っていたトレイをバンッと机に置いて黒子の座る反対側へと腰かけた。
大きな音をたてながら手を合わせて「いただきますっ」と発してからハンバーガーの包みを開けた。

黒子はそれを見てからまた読書に戻った。



「あれ?てか火神は?一緒じゃねぇの?」
「火神くんは晩御飯の買い物をするので帰りました」
「え、主夫なの??火神主夫なの??」
「一人暮しだそうです」
「そりゃスゲーな」



ハンバーガーを口に詰め込みながらも黒子と器用に会話する高尾。
黒子はちらりと高尾の方に目をやると、トレイにはハンバーガーが3つ乗っていた。

自分の胃袋からは想像ができないその量に少しだけ目を見開く。
火神の量に比べれば少ないものだが、黒子から見れば3つは多い。



「そんなに食べて晩御飯食べられますか?」
「余裕余裕。てか一緒にいないとか珍しいのか?」
「そういう高尾くんこそ。緑間くんはどうしたんですか?」
「緑間?あー、何か今日は相性が悪いんだとさ、蟹座と蠍座」
「成る程」



食べかけのハンバーガーを机に置き、黒子の方を見て話をする高尾。
黒子は本を読んだままだ。

高尾も気にしていないのか、黒子にガンガン話しかける。



「てかさ聞いてくれよ!!緑間がこの間さー、ラッキーアイテム見つからないとか行って死にそうだったんだぜー?勘弁してほしいっての、まったく」
「どうして勘弁してほしいんですか?」
「オレに探してこいって言うわけよ、見つけたら来い、だってよ」
「…何を探していたんですか?」
「あれよあれ、緑の…ん?名前何だっけ」



高尾は顎に手を当てて天井を見上げながら「んー…」と考え始めた。
黒子も少しは興味が湧いたのか、本を閉じてテーブルに置いた。

「ちょっと前に流行ったんだよあれ」と言いながら目をぱちっと開けて黒子の方に向き直る。



「ほら、一昔前にはやったやつだよ…楽器!」
「?楽器ですか…カスタネットとかですか?」
「流行ってねーじゃんそれ!!ってか緑間がカスタネット持ってるとこ想像しただけで笑えるわ!!やべ、マジ爆笑…!!」



190越えの男が小さなカスタネットを持っているところを想像したのか、笑いだす高尾。
一方黒子はピクリとも笑わず、緑の楽器を思い出そうとしていた。

緑間がおかしな物を持ち歩いていたのは中学でもそうだったので、今更何を持っていようが驚きはしない。



「ほら、あれだよ…長いやつ」
「?…ハーモニカとかですか?」
「違う違う。もっとこう…音が鳴る…緑の!」
「持ち運べる楽器だとタンバリン、リコーダー、トライアングル…」
「緑だって、緑」
「…ボクもうピッコロが頭から離れないんですが」
「ちょっ、やめて何だよそれ!!ナメック星人だし楽器じゃねぇじゃん!!やだ何もう黒子やべぇ!!!!!ハンパねぇギャグセンスにオレ死にそうなんだけど!!ピッコロって!!ピッコロって!!」
「…ピッコロという楽器もあるんですよ」
「流石に知ってるっつーの!!やべ、腹痛ぇ!!笑い死ぬ!!ひーっ!!」



店内にも関わらずゲラゲラ笑い出す高尾だったが、店内自体も騒がしかったため、特に注意される事は無かったが、近くの客はチラチラと見ていた。

クスクス笑いながら周りに見られていることに気が付いた黒子は周りに小さく頭を下げて高尾を沈めようと試みる。
が、効果は勿論0である。
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